雑草も生えない
寒いコンクリートの町の奥に
寒さが好きなトカゲが
さまよっている
日の照る時など
滅多にない
かすれた枯れ葉だけが風に舞う
寒々として
何もない町の
灰色の陰に
そのトカゲは生きている
何をした
何をしてそうなったと
問うても答えはしない
忘れてしまったのではない
考えることさえ
やめたのだ
忘れてしまいたい記憶は
黒い石のような癌となって
永遠に
そのトカゲの腸に棲みついていく
とけはしない
少しずつふくらんでいく
そして時々
激しく痛むのだ
日を浴びることができる身分を
永遠に失うまで
そのものは逃げ切ったのだ
自分というものから
その町にはもう
誰も住んではいない
自分を憎み
幽霊のように虚無をさまよった人間が
営々と作り続けてきた
都会というものが
恐ろしいものだとわかったとき
人間はみんな逃げていったのだ
寒さの好きなトカゲだけが
まだそこを
さまよっている
かつて得ていた
黄金の栄華のかけらが
まだ少しでも落ちていないかと
永遠に
探し続ける