前回は、蛸の滑り台がある公園で終わり、目的の駅に到達する寸前でした。ようやく、目的の駅が登場します。
大井町線の下神明駅です。駅ナンバーはOM02、所在地は品川区西品川一丁目です。荏原地区と接する位置のためにわかりにくいのですが、荏原地区ではなく、品川区の大崎第二地域センターの管内にあります。もっとも、地域センタ—の所轄と旧品川区・旧荏原区の範囲とは食い違いもありますので、注意を要します。
開業は1927(昭和2)年7月6日ですが、当初から下神明と名乗っていた訳ではありません。現在の名称になったのは1936(昭和11)年1月1日のことで、当時の蛇窪村にあった下神明天祖神社が由来となっています。この神社は現在も二葉一丁目にあります。ちなみに、上神明天祖神社も二葉四丁目に存在します。
東急の路線図を見ると、大井町線に戸越公園駅があり、池上線に戸越銀座駅があります。戸越駅は、東急線ではなく、都営浅草線の駅で、1968(昭和43)年に開業しています。後からできた駅が戸越を名乗り、先にできた戸越公園駅の当初の名称は蛇窪、戸越銀座駅は1927年8月開業時から変わらない名称です。こうなると、他の地方に戸越駅がなければ、東急線に戸越駅が存在しないことを説明できません。
この点については、簡単に種明かしをすることができます。実は、下神明駅が初代の戸越駅でした。開業時から1935(昭和10)年12月31日までは、大井町線に紛れもない戸越駅が存在した訳です。何故に「下神明」に改称したのか、手元にある資料ではわからずじまいでしたが、1936年1月1日に戸越→下神明、同日に蛇窪→戸越公園と改称されていることがヒントとなるでしょう。
下神明駅の改札口(一箇所しかありません)の前を通る道路です。商店街らしいものはありません。いくつか商店はあるのですが、コンビニエンスストアなども見当たりません。大井町駅まで1キロメートル程度しか離れていないからでしょう(大井町線の営業キロでは800メートル)。大井町駅まで十分に歩ける距離ですし、同駅から大井町線の高架下などに商店街が伸びています。
東急が発表しているデータによると、2014年度における下神明駅の一日平均乗降人員は7434人で、前年度より6.7%増とのことですが、1万人を下回ることに変わりはありません。大井町線では北千束に次いで2番目に少ないのです(3番目に少ないのが緑が丘で、1万人未満であるのはここまでです)。
高いフェンスに遮られているのは、湘南新宿ライン(大崎支線)と横須賀線(品鶴線)です。元々は東海道本線の支線か山手線の支線ということになり、いずれにしても元来は貨物線ですが、現在は大崎駅構内として扱われるため、山手線の一部ということになります。奥のほうへ進めば大崎駅に入ります。
この近所に蛇窪信号所があります。但し、現在、正式には大崎駅構内の扱いであり、信号所としては廃止されたことになっていますが、便宜上、信号所としておきます。ここで品川駅からの品鶴線(横須賀線が走ります)と大崎支線が合流します。
なお、大崎支線が開通したのは1934(昭和9)年、品鶴線が開業したのは1929(昭和4)年です。品鶴線に横須賀線の電車が走るようになったのは1980年のことでした。
蛇窪信号所はこの少し先、奥のほうに見える大井町線の高架の下です。品鶴線のほうが開業時期は遅いのですが、建設時期の関係か、大井町線のほうが高架となっています。下神明駅は開業当初から高架駅であった訳です。横須賀線の電車が走るようになっても、ここには駅ができず、少し離れた西大井一丁目に西大井駅ができました。
ちょうど、大井町線の上り各駅停車が到着するところです。上に通るのがJR東海の東海道新幹線、下に通るのがJR東日本の東海道本線(品鶴線と大崎支線)、三層構造になっています。
国鉄時代は、東海道新幹線が東海道本線の線増扱いで独立路線となっていなかったのですが、現在はどうなのでしょうか。
桁下2.4メートルのガードです。大型貨物自動車は通り抜けられません(大型でなくとも難しいでしょうか)。くぐり抜けると豊町二丁目で、日本音楽高校のほうへ向かうことができます(最寄り駅は下神明であると案内されています)。下神明駅の所在地となっている西品川は、東海道新幹線および品鶴線の沿線を範囲としており、両線の東側が一丁目、西側が二丁目および三丁目となっており、下神明駅は一丁目のほぼ南端に位置しています。
歩行者専用道路、否、路地と表現してよい道で、下神明駅への近道となっています。この辺りも2階建ての木造住宅が多く、高層建築物は見当たりません。
駅前を通り、大井町のほうへ向かうと、高架下に御覧のような壁画が描かれています。最近は意味のわからない、独りよがりな落書きばかりが目立ちますので、その対策なのでしょう。
落書きは器物損壊罪に該当します。財物を毀損するからです。落書きするほうは精神的自由を持ち出すかもしれませんが、されるほうは財産権という、はるかに具体的な権利を侵害されているのです。どちらが重いかは言うまでもないでしょう。
ただ、せっかくの壁画で高架橋脚の壁面を美化しようとしても、年月が経った橋脚に施したためなのか、汚れがかなり目立ちます。貼り紙の跡も確認できますし、左側の変色が気になってしまいます。
こちらも橋脚の壁面に描かれた壁画です。メルヘンチックな絵柄ですが、童話をモティーフにしたのでしょうか。
高架下の脇道となっている所です。抜ければすぐに都道420号ですが、どこかの横丁ではないかと思えてきます。飲み屋までありますから、夜になると酔客が現れたりするのでしょうか。ここから大井町駅までは、歩いても15分くらいです。