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ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

地方法人税を廃止するための法律案(国会で成立しないと思われますが)

2017年05月30日 00時00分00秒 | 国際・政治

 今から2年半程前になりますが、「税源の偏在と地域間格差〜地方法人税法(平成26年3月31日法律第11号)」が、私の論文として初めて自治総研(地方自治総合研究所発行)に掲載されました。

 地方法人税という名称ですが、これは地方税ではなく、国税です。地方法人税法第1条および地方交付税法第6条第1項に定められるところから明らかであるように、地方交付税の財源となるものです。同じように地方の財源になるべきものとして地方特別法人税がありますが、こちらは地方特別法人譲与税として法人事業税の一部を国税化したものです。従って、税収は地方交付税不交付団体にも配分されることとなります。これに対し、地方法人税は法人住民税の一部を国税化したもので、税収は地方交付税交付団体にのみ配分されることとなります。

 しかし、地方交付税の財源にするとは言え、地方税の一部を国税化したという点においては、地方創生には相応しいかもしれませんが地方分権には相応しくないとも言えます。また、法人課税の制度が非常に複雑なものとなりました。税源配分という観点からすれば、地方特別法人税は妥協の産物としか言いようがありませんし、地方法人税についても抜本的な改革から程遠いとしか言えません。

 さて、現在の第193回国会に、参議院議員提出法律案第98号として「地方法人税の廃止に関する法律案」が提出されています。次のようなものです。

 「(趣旨)

第一条 この法律は、地方公共団体の自主財源を適切に確保する観点から、国と地方公共団体の税源配分を見直す必要があることに鑑み、地方法人税を廃止すること等について定めるものとする。

(地方法人税の廃止)

第二条 地方法人税は、廃止するものとし、政府は、このために必要な法制上の措置を講ずるものとする。

(地方公共団体の財政状況に影響を及ぼさないための措置)

第三条 政府は、前条の法制上の措置を講ずるに当たっては、地方法人税の廃止によりこれを財源とする地方交付税の総額が減少することを踏まえ、地方公共団体の財政状況に影響を及ぼすことのないよう、法人の道府県民税及び市町村民税の法人税割の税率の引上げその他の法制上の措置を講ずるものとする。

  附 則

 この法律は、公布の日から施行する。

  理 由

 地方公共団体の自主財源を適切に確保する観点から、国と地方公共団体の税源配分を見直す必要があることに鑑み、地方法人税を廃止すること等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」

 議員立法の性格とも言えるのかもしれませんが、第2条を見れば明らかであるように、地方法人税の廃止だけを明文で定め、その他の措置については政府に委任する形をとっています。本来であれば、地方法人税を廃止して法人住民税を従前のものに復元し(これは第3条の内容と言えるでしょう)、その上で、例えば地方交付税における法人税の割合を変更する、税源の偏在を是正するために地方交付税における測定単位や補正について改正を行う、などの方針を定めるべきですが、仕方のないところでしょうか。

 また、地方特別法人税・地方特別法人譲与税という制度を廃止しないのか、という疑問も残ります。実は消費税・地方消費税の税率引き上げ(8%→10%)が行われる段階での廃止は決まっているのですが、そのこととは関係なく、地方特別法人税・地方特別法人譲与税の廃止を提案することは考えられなかったのでしょうか。今回の法律案を読んで、結局のところ何を目的としているのか、よく見通せないようなものであると思われます。

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