今日、フィリアホールでの「奥泉光×矢野沙織カルテット 『ビビビ・ビ・バップな午後〜ジャズと小説と電脳空間』」を見るために青葉台へ行きました。ブックファーストに寄ってみたら、Harbor Business Online編『枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社刊)がありました。
これは、今年の7月20日、枝野幸男議員による内閣不信任決議案「趣旨弁明演説」の全文を、おそらくはほぼそのまま収録したものです。2時間43分にも及んだというのは、少なくとも記録が残っている中(1972年以降)では最長であるとのことで、このことも驚くべき話ですが、それ以上に驚くべきなのは、長大な原稿を読み上げるのではなく、真のレジュメというべきか、主張したいことを箇条書きにしただけの、数枚のメモに基づいていたという事実です。
さらに大きく、いや最も大きく驚くべきことは、日本の国会における演説の全部が、このように単行本(ブックレットほどの薄いものですが)として刊行されたことです。
イギリス、アメリカ、フランスではありそうな話です。ブックレットよりは少し厚めのものですが、私は、大学院生時代、あのリヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー(Richard von Weizsäcker)の演説集(ドイツ語)を購入し、何人かの自主ゼミで読みました。有名な「荒れ野の40年」も収録されていたからです(そうです、敢えてドイツ語で引用するとWer aber vor der Vergangenheit die Augen verschliest, wird blind für die Gegenwart.という文章が登場する、あの演説です)。勿論、ヴァイツゼッカーの演説集は日本語訳でも刊行されています。
しかし、日本で、これまで国会における演説が単行本になったことがあったのでしょうか。後で何本かがまとめられて刊行されることはあるかもしれませんが、時間もそれ程経過していないのに一本の演説が一冊の本になるということは、おそらく例がなかったことでしょう。
購入して、帰りの電車の中で読んでいました。2時間43分という時間が必要であった。このように評価してよいものです。過剰でも不足でもなく、複数にわたりながら根本では共通するような諸問題を手際よく、しかも深く取り上げ、批判しているところには感心しました。変な喩えになって申し訳ないのですが、何処をどのように切っても鮮血が吹き上がってくるような印象すら受けます。
先頃閉会した第196回国会については、憲政史上最悪の国会(議会)であるという評価も少なくありません。枝野氏自身も演説においてこのように評価しています(本書における田中信一郎准教授の解説も必読です)。実際に、3月以降、具体的なことは記しませんが文書やデータの改竄が当たり前のようになされ、隠される、はぐらかされる、など、無茶苦茶としか表現しようがない実情が明らかにされました。作成してから1年以内に廃棄するのであれば、何のために日誌を作っているのかわかりませんし、最初から作らないほうが合理的です。今の日本の状況からすれば、今の政権がどうして情報公開法は直ちに廃止する法律案を提出しないのかがわからないくらいです(これは私の考えであって、枝野氏はこのようなことを言っておりません。あしからず)。文書も情報もいい加減に扱われ、とにかく捨てられる。それが日本です。また、7月の西日本豪雨については、初動対応が遅れたという批判もやむをえないところでしょう(このことは枝野演説も触れています)。枝野氏は、あの赤坂●●亭(敢えて詳しく書く必要もないでしょう)についてもしっかりと言及した上で、初動対応などについて批判しています。
そして、国会議員が職務として何を行うべきなのか、立法府、立法機関の役割とは何かを、枝野演説は明言しています。ここは私が安易に引用してはならないところですので、演説そのものをお読み下さい。
政治的な立場、思想上の相違などを問わず、一度は読んでみるべき演説です。
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