漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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東野圭吾・変身(覚書)

2008-12-10 | 
「ガリレオ」シリーズや「流星の絆」と、このところ話題も多くて避けて通れない作家ですが私には初挑戦の本。
「変身」も2005年に映画化されていたそうで、どうりで聞いたことのあるストーリーだと思ったわけだ。

他人の脳を部分的ながら移植された男がしだいに性格に変化をきたし、移植された脳に浸食され失われる自分を必死に取り戻そうとする話。

ドキッとしましたねえ。
いったい性格ってどうやって作られてるんだろう?

なぜか抑えられない、過敏になってしまう・・・
そんな自分のどうにもならない感情に日々悩んだり落ち込んだりするわけだけど、そんな不安をズバリ言い当てられた気分。

「人生経験」って脳に限らず細胞一つ一つの中にもあるのかもしれない。
その記憶が積み重なった結果、さまざまな感情が生じ、生き方ができあがる。

エディプスコンプレックスという精神分析分野の話が登場するが、子供のころの心の痛手が大人になってからの凶暴な性格に発展したりするなんて、自分にはどうしようもないところで性格ができているようで、困りはててしまう。

この物語は最後にさらなる問題提起をしている。
現代では、生命維持に重要な部分が機能停止した瞬間を人の死と判断するが、その時まだ死んだ細胞はごく一部であって、かなりの細胞は生きている。
だから移植ができるわけだけど、それらの細胞ひとつひとつにかつてのその人の意識が存在しているとしたら・・・

本当は人は(またはその人の意識は)いつ死ぬんだろう。

東野圭吾 1958年 大阪生まれ