漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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新糖尿病治療薬ジャヌビア(シタグリプチン)

2010-02-23 | 調剤薬
糖尿病治療薬で最近注目されている新薬があります。
これまでの薬とはまったく作用機序が異なるためです。

その名を『ジャヌビア』(DPP-4阻害剤)
ローマ神話に登場する二つの顔をもつ神ヤヌス(janus)にちなんでネーミングしたそう。
二つの顔をもつヤヌス神

つまり『正反対の作用を有するホルモン』の分解を遅らせて、
そのホルモンの存在時間を長くする薬です。

血糖値が高い時は、血糖値を下げる方向へ(インスリンの分泌を促す、グルカゴンの放出を抑える)
血糖値が低い時は、血糖値が下がり過ぎない方向へ
恒常性を保つ大切な働きをしているホルモンなのです。

その正反対の作用を有するホルモンGLP-1は、
実は以前に話題にした⇒『肥満対策・運動は食前か食後か?』
登場した「消化管ホルモン(インクレチン)」なのです。


『ジャヌビア』は、
吐き気や低血糖などの副作用も少なく、1日1回の服用でOK。
日本人に多い高齢者の2型糖尿病に持ってこいなのだそう。

もちろん運動や食事など生活習慣の改善は絶対必要です。
糖尿病薬が一気に血糖値を正常にしてくれるわけではありません。
2型糖尿病の場合は、生活習慣を改善するほうがずっとHbA1cの数値は改善します。
この薬の登場で、もう何を食べても大丈夫なんて安心しないほうがいいですよね、きっと。


(DPP-4阻害剤:インクレチンのひとつGLP-1を分解してしまう酵素DPP-4を阻害してGLP-1の働きを強化する)
《効能・効果》
2型糖尿病。ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る
(1) 食事療法・運動療法のみ
(2) 食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用
(3) 食事療法・運動療法に加えてチアゾリジン系薬剤を使用
(4) 食事療法・運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用
ただし、2型糖尿病の進行とともに、インクレチン分泌力も落ちてくるので、
ジャヌビアの作用にも限界が現れます。比較的初期の2型糖尿病に有効とのこと。