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漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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吉田修一「悪人」覚書・だれもが悪人かも

2010-09-11 | 
小説『悪人』、読んだんよ~。
なんせすごい宣伝量で、どこの本屋でも売れ筋上位に
妻夫木聡と深津絵里の顔がドーンと並んどって、
しかも、この文庫カバーには「映画300円引き券」がついとるっちゃね~。
(読んでたらすっかり九州弁になってしまった・・・)


どれほどの悪人が登場するのかと思ったら、
いかにも「悪いやっちゃなあ、コイツは」という役はひとりもおらず、
どの登場人物にも心当たりがあり、あれこれの感情すべてに
共感できるところがある自分の中には、十分『悪人』が存在していると
言えるのかもしれません。

人間って難しいなあと思うのは、
自分のわがままを通したり、してやれなかったことで相手にむやみに
赦しを乞うたり、それはたとえば愛情の表現であるにも関わらず、
その僅かな「押しつけがましさ」で、
悪気はないのに悪を産んでしまう可能性があるということでしょうか。

そんなことまでいちいち考えてたら、何にもできなくなるけど、
ある重大な悲劇的な事件が起こる時、
それほどの悪人がいるわけでもないのに、予期せぬ悪の連鎖みたいなものが
起こっていることもあるっちいうこっちゃねえ。
それも、それぞれの人生という経験を経て、または若さという経験のなさ
がゆえに。

とても人間臭い作品でした。

1968年 長崎生まれ 長崎育ち