あの世とこの世の境が真っ黒な波にのまれてなくなるような、
この世の出来事こそが確かなものであると思うのは、単なる驕りに過ぎないのかもしれないと、自分の輪郭さえも不確かになるような、そんな世界。
人の深層にある悪が噴出したような、どうにも切ない事件があって、
生死をさまよった幼子「ミハル」は、生きているがおそらくその魂はどちらの世にあるというものでもないようで、周りの人の魂をも激しく揺るがす。そんな不思議な空間をすごくリアルに映画でもみているかのように沼田さんは描ききっています。
読み手の経験によって共鳴する登場人物は異なると思う。
私としては、「カアサン」の異常。
「カアサン」の異常は、物語の流れから想像すると死んだ猫の「クマ」が乗り移ったように思うけど、医師は「レビー小体型認知症」かもしれないと判断する。
確かに、認知症症状に似ていると思いながら読んでいた。
だから考えてみれば、
「認知症」の人の魂はもしかしたら、
この世にしがみついている人間には届くことのない境を超越したところに到達しているのかもしれないなあ。
レビー小体型認知症:レビーさんが発見した中枢および末梢の神経細胞に出現する円形・好酸性の細胞質封入体。これが神経を傷つけることによっておこる認知症。
特徴:
しっかりしているときとぼーっとしているときがある
リアルな幻視、人や動物や虫が見える 幻聴、妄想
手足の安静時の震え、歩行障害、筋固縮、失神やめまい
初期は物忘れが少ない