漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0153

2020-03-31 19:35:31 | 古今和歌集

さみだれに ものおもひをれば ほととぎす よふかくなきて いづちゆくらむ

五月雨に もの思ひをれば ほととぎす 夜深く鳴きて いづちゆくらむ

 

紀友則

 

 五月雨が降る中に物思いしていると、夜中にほととぎすが鳴いた。一体どこへ行くのだろうか。

 雨の降る夜中に物思いにふける鬱々とした気分の作者。そこに、懐旧や思慕の情をかきたてると言われるほととぎすの声が聞こえてくるという情景。歌合せの場で詠まれたものですので、おそらくは実体験ではなく想像の作ですが、歌われた場面が目に浮かび、鑑賞者までも切ない気持ちにさせる感がありますね。

 

 一日一首の古今和歌集を始めてちょうど5カ月。明日からは新年度ですね。また新たな気持ちで続けていきたいと思います。よろしくお付き合いください。

 


古今和歌集 0152

2020-03-30 19:32:56 | 古今和歌集

やよやまて やまほととぎす ことつてむ われよのなかに すみわひぬとよ

やよや待て 山ほととぎす ことつてむ われ世の中に 住みわびぬとよ

 

三国町

 

 おいお待ちよほととぎす、言づてがあるのだから。私はもうこの世の中に住むのに疲れてしまったと。

 作者は三国氏の女性で本名は不詳。仁明天皇の更衣だったとされる人物です。ほととぎすに言伝てを託した相手は山に住む隠遁者でしょうか。それも、かつて自分が思いを寄せた異性、とまで考えるのは空想が過ぎるでしょうか。


古今和歌集 0151

2020-03-29 19:58:27 | 古今和歌集

いまさらに やまへかへるな ほととぎす こゑのかぎりは わがやどになけ

今さらに 山へ帰るな ほととぎす 声のかぎりは わが宿に鳴け

 

よみ人知らず

 

 今さら山へは帰るな、ほととぎすよ。声の続く限り、私の家の庭で鳴くがよい。

 今は家の庭で美しい声を聞かせてくれているが、季節が過ぎれば山へと帰って行ってしまうほととぎす。そのときが迫っているのかもしれませんね。それを惜しむ気持ちをストレートに詠んだ歌です。歌意もわかりやすいですね。


古今和歌集 0150

2020-03-28 19:21:50 | 古今和歌集

あしひきの やまほととぎす をりはへて たれかまさると ねをのみぞなく

あしひきの 山ほととぎす をりはへて たれかまさると 音をのみぞ鳴く

 

よみ人知らず

 

 山ほととぎすが、一体誰が自分に勝る者がいるだろうかと、声をあげて鳴き続けている。

 「あしひきの」は「山」に掛かる枕詞。「をりはふ」は「折り延ふ」で、長く続ける、いつまでも続けるの意です。いつまでも鳴き続けているほととぎすの声を聞いて、自分がもっともすぐれていると主張でもしているのだろうかと詠んでいます。なお、私の手元の書籍では、恋の嘆きをうたっているとの記載があり、そうした解釈もとり得るようです。


古今和歌集 0149

2020-03-27 19:20:16 | 古今和歌集

こゑはして なみだはみえぬ ほととぎす わがころもでの ひつをからなむ

声はして 涙は見えぬ ほととぎす わが衣手の ひつをからなむ

 

よみ人知らず

 

 声はするけれど涙は見えないほととぎすよ。私の衣の袖が涙で濡れているのを借りていってくれないものだろうか。

 涙で濡れた袖をほととぎすが借りて行ってくれることで、自分は悲嘆の涙にくれずにすむことになればよいのに、との思いでしょうか。素直な心情というより、ちょっと頭でひねり出したもののように私には感じられました。