漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 444

2024-07-03 06:49:20 | 貫之集

わづらひて、人にえあはであるに

いとどとふ ひともなきかな こよひもや とりさへなきて われはかへらむ

いとどとふ 人もなきかな 今宵もや 鳥さへ鳴きて われは帰らむ

 

人に逢うことができず困惑して

今宵は逢えないまま、朝になって鳥が鳴くまでになったので私はもう帰ろうか。こうして、ここには訪ねて来る人もいなくなるのであるよ。

 

 逢瀬を拒否され、とうとう朝まで入れてもらえなかった男の立場での、いささか皮肉を込めた歌ですね。


貫之集 443

2024-07-02 06:45:19 | 貫之集

旅人の衣うつ声を聞きたる

くさまくら ゆふかぜさむく なりぬるを ころもうつなる やどやからまし

草枕 夕風寒く なりぬるを 衣うつなる 宿やからまし

 

衣を打つ音を旅人が聞いている

旅のさなか、夕風が寒くなってきたとき、衣を打つ音が聞こえてくる。その家に一夜の宿を借りられないものか。

 

 遠い地にいる夫を偲んで衣を打つ音に、旅人もまた故郷に思いをはせている情景ですね。
 この歌は、新古今和歌集(巻第十「羈旅」 第905番)に入集しています。


貫之集 442

2024-07-01 06:21:48 | 貫之集

やへむぐら しげくのみこそ なりまされ ひとめぞやどの くさきならまし

八重葎 しげくのみこそ なりまされ 人めぞ宿の 草木ならまし

 

雑草がますます生い茂ってくるばかり。家の草木が枯れるように、人も離(か)れて訪れる人がいなくなったのであろうか。

 

 詞書は 441 と共通(やもめなる人の家)。人も草木も「か(枯/離)」れるといえば、百人一首(第28番)にも採録された 古今集 0315 の歌が思い出されますね。

 

 

やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば

山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば

 

源宗于