なにはがた しほみちくらし あまごろも たみののしまに たづなきわたる
難波潟 潮満ちくらし 雨衣 田蓑の島に 鶴鳴き渡る
よみ人知らず
難波潟に潮が満ちてきたようだ。田蓑の島に向かって鶴が鳴いて飛んで行く。
「難波潟」は現在の大阪市の中心部あたりで、当時は干潟の広がる浅い海だったとのこと。「しほみちくらし」は「潮満ち来らし」で、「らし」は推量の助動詞。「雨衣」は「蓑」にかかる枕詞ですね。
なにはがた しほみちくらし あまごろも たみののしまに たづなきわたる
難波潟 潮満ちくらし 雨衣 田蓑の島に 鶴鳴き渡る
よみ人知らず
難波潟に潮が満ちてきたようだ。田蓑の島に向かって鶴が鳴いて飛んで行く。
「難波潟」は現在の大阪市の中心部あたりで、当時は干潟の広がる浅い海だったとのこと。「しほみちくらし」は「潮満ち来らし」で、「らし」は推量の助動詞。「雨衣」は「蓑」にかかる枕詞ですね。
わたのはら よせくるなみの しばしばも みまくのほしき たまつしまかも
わたの原 寄せ来る波の しばしばも 見まくのほしき 玉津島かも
よみ人知らず
大海原から繰り返し寄せ来る波のように、何度でも繰り返し見たい玉津島であるよ。
「しばしば」は「寄せ来る波」と「見まくほし」の両方に掛かっていますね。「玉津島」は、和歌山県にある玉津島神社のあたりと言われ、風光明媚の地として古くから多くの歌に詠まれた歌枕となっています。
わたつうみの かざしにさせる しろたへの なみもてゆへる あはぢしまやま
わたつ海の かざしにさせる 白妙の 波もてゆへる 淡路島山
よみ人知らず
大海が簪(かんざし)にしている白波で周囲を結い巡らしている淡路島であることよ。
白波を、海が自らの頭に挿している簪に見立てた上で、淡路島はその白波(=簪)で周囲を結い巡らしていると詠む。淡路島「山」としているのは、海から突き出ていることを「山」と表現したもの。淡路島を神域と捉えて、白波によってその神域への結界を張り巡らしていると見ての詠歌でしょう。観光地然としている現代の淡路島とは少しイメージがあわないかな? ^^;;
わたつうみの おきつしほあひに うかぶあわの きえぬものから よるかたもなし
わたつ海の 沖つ潮合いに 浮かぶ泡の 消えぬものから 寄る方もなし
よみ人知らず
大海の沖の潮がぶつかり合っているところに浮かぶ泡のように、この身は消えはしないものの、身を寄せるところもない。
第一句~三句がすべて字余りという珍しい歌。生きながらえてはいても身を寄せる場所さえないわが身を沖合に浮かぶ泡に準えた、寂しく悲しい詠歌ですね。