さつきやま こずゑをたかみ ほととぎす なくねそらなる こひもするかな
五月山 梢を高み ほととぎす 鳴く音そらなる 恋もするかな
紀貫之
五月の山は枝が伸びて梢が高いので、ほととぎすの鳴き声が空まで届く。私はと言えば、心が空(から)になるような恋をしていることよ。
同じ「空」でも、自分はつのる恋情で心が空虚になってしまっている、という歌です。0572 で感じたのと同様、いささか理屈っぽい気がしますが、それもまた貫之の歌風のひとつということでしょう。
さつきやま こずゑをたかみ ほととぎす なくねそらなる こひもするかな
五月山 梢を高み ほととぎす 鳴く音そらなる 恋もするかな
紀貫之
五月の山は枝が伸びて梢が高いので、ほととぎすの鳴き声が空まで届く。私はと言えば、心が空(から)になるような恋をしていることよ。
同じ「空」でも、自分はつのる恋情で心が空虚になってしまっている、という歌です。0572 で感じたのと同様、いささか理屈っぽい気がしますが、それもまた貫之の歌風のひとつということでしょう。
ねになきて ひちにしかども はるさめに ぬれにしそでと とはばこたへむ
音に泣きて ひちにしかども 春雨に 濡れにし袖と 問はばこたへむ
大江千里
あの人を思い、声を上げて泣いてしまって濡れた袖だけれども、春雨に濡れたのだと、聞かれたら答えよう。
「ひつ」は濡れる意。ご紹介するのは少し先ですが、恋の涙を春雨に袖が濡れると詠んだ歌は 0731 にも登場します。
かげろふの それかあらぬか はるさめの ふるひとなれば そでぞぬれぬる
陽炎の それかあらぬか 春雨の ふるひとなれば 袖ぞぬれぬる
よみ人知らず