延喜五年二月、泉の大将の四十賀屏風の歌、仰せ事にてこれを奉る
なつやまの かげをしげみや たまぼこの みちゆきひとも たちどまるらむ
夏山の 陰をしげみや 玉ぼこの 道行き人も 立ちどまるらむ
延喜五(905)年二月、藤原定国の四十歳を祝う屏風歌を、醍醐天皇のご下命によって奉った。
夏山の木が繁って木陰ができているからであろうか、道を行く人も立ち止まって休んでいるのだろう。
拾遺和歌集(巻二「夏」第130番)にも収録されたこの歌を皮切りに、貫之集 889 首の和歌のご紹介を今日から始めます。改めてよろしくお願いします ^^
貫之集は「第一」~「第九」の9部構成で最初の4部 533 首は「屏風歌」、つまり収載歌のおよそ6割が屏風歌で占められおり、これが貫之集の(と言うより、紀貫之という歌人の)大きな特徴となっています。以後は「第五 恋」「第六 賀」「第七 別」「第八 哀傷」「第九 雑」となっており、古今集との比較で言えば、春~冬の四季を題材とした部立てがそのまま「屏風歌」となっている感じですね。
屏風歌とは、屏風に描かれた絵画にあわせて貼られた色紙形に記された歌のことで、絵の中の人物の心で詠まれるのが普通でした。また屏風絵の題材は多くが四季の景物や行事、名所などでしたので、やはり貫之集の一部~四部は基本的に四季を詠んだ歌となっています。(ただし古今集とは異なり、四季の移ろいの順には並んでいません。)
貫之の歌に触れるとき、私たちは実際の風景を詠んだ歌と思ってしまいがちですが、実のところ、その多くは屏風絵に描かれた風景や行事などを詠んだもの。貫之は当代随一の屏風歌歌人でもあったのですね。
一首目ということで少々説明が長くなりました。貫之集の秀歌の数々、気が向かれたときにおつきあいいただければ幸いです。
そろそろ大学で講義ができそうですね。
コメントありがとうございます。
大学で講義・・・ 見果てぬ夢ではありますね ^^;;;
またよろしくお願いします!