きみこふる なみだしなくば からころも むねのあたりは いろもえなまし
君恋ふる 涙しなくば 唐衣 胸のあたりは 色燃えなまし
あなたを恋しく思う涙がなかったならば、胸のあたりに恋の炎に燃え上がった色を見てもらえるであろうに。
愛しい人への恋の思いに胸中は燃え上がっているのに、その同じ恋の思いゆえの涙がその炎を消してしまって炎を見てもらえない(=思いが伝わらない)との嘆きの歌。
この歌は古今和歌集(巻第十二「恋二」 第572番)に入集しています。
きみこふる なみだしなくば からころも むねのあたりは いろもえなまし
君恋ふる 涙しなくば 唐衣 胸のあたりは 色燃えなまし
あなたを恋しく思う涙がなかったならば、胸のあたりに恋の炎に燃え上がった色を見てもらえるであろうに。
愛しい人への恋の思いに胸中は燃え上がっているのに、その同じ恋の思いゆえの涙がその炎を消してしまって炎を見てもらえない(=思いが伝わらない)との嘆きの歌。
この歌は古今和歌集(巻第十二「恋二」 第572番)に入集しています。
わがこひは しらぬやまぢに あらねども まどふこころぞ わびしかりける
わが恋は 知らぬ山路に あらねども まどふこころぞ わびしかりける
私の恋は、見知らぬ山路に迷いこんだわけでもないのに、戸惑う心がまことにわびしいことだ。
古今和歌集(巻第十二「恋二」 第597番)にも入集している秀歌。戸惑う恋心を見知らぬ山道での彷徨に喩える比喩が秀逸ですね。
よそにみて かへるゆめだに あるものを うつつにひとに わかれぬるかな
よそに見て 帰る夢だに あるものを うつつに人に 別れぬるかな
愛しい人の姿をよそで見て帰る夢でさえも寂しく思うのに、現実にその人と別れることになったのだなあ。
まこもかる よどのさはみづ あめふれば つねよりことに まさるわがこひ
真菰刈る 淀の沢水 雨降れば 常よりことに まさるわが恋
淀の沢の水かさが雨が降ると増すように、いつもよりも一層私の恋心がまさってくる。
「真菰刈る」は「淀」にかかる枕詞。真菰の産地であることからのようです。
この歌は、古今和歌集(巻第十二「恋歌二」 第587番)に入集しています。
たなばたの としにひとたび あふことは ひとめぞのちの そらにはありける
たなばたの 年に一度 あふことは 人めぞのちの 空にはありける
織姫と彦星が年に一度しか逢わないのは、そのあとの人目が二人が逢う空になりかわってしまって、それを避けるためであるのだなあ。
こちらも 559 同様、人目を避けなければならないために逢瀬がままならないわが身を憂いての詠歌でしょうか。