たまかづら いまはたゆとや ふくかぜの おとにもひとの きこえざるらむ
玉かづら 今は絶ゆとや 吹く風の 音にも人の 聞こえざるらむ
よみ人知らず
もう私達の関係は絶えてしまったので、吹く風が目に見えないように、あの人の噂も耳に入って来ないのだろうか。
「玉かづら」は「絶ゆ」にかかる枕詞ですが、いとしい人の関係がつる草が伸びるように長く続いていたのに、というニュアンスも含んでいるのでしょう。「吹く風」はよく出て来るフレーズで、古今集では11首ほどに登場します。その中で、0475 では、本歌と同じく目に見えないものの喩えとして使われていますね。
よのなかは かくこそありけれ ふくかぜの めにみぬひとも こひしかりけり
世の中は かくこそありけれ 吹く風の 目に見ぬ人も 恋しかりけり
紀貫之