漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0122

2020-02-29 19:36:04 | 古今和歌集

はるさめに にほへるいろも あかなくに かさへなつかし やまぶきのはな

春雨に にほへる色も あかなくに 香さへなつかし 山吹の花

 

よみ人知らず

 

 春雨に濡れてしっとり美しい色も見飽きることはないのに、その香りまでもが心惹かれる山吹の花よ。

 ひとつ前の 0121 から、山吹の花を詠んだ歌が五首続きます。古代から好んで歌に詠まれた花の一つで、後拾遺和歌集に収録された次の歌も良く知られています。

 

ななへやへ はなはさけども やまぶきの みのひとつだに なきぞあやしき

七重八重 花は咲けども 山吹の みのひとつだに なきぞあやしき

兼明親王

 


古今和歌集 0121

2020-02-28 19:30:44 | 古今和歌集

いまもかも さきにほふらむ たちばなの おじまのさきの やまぶきのはな

今もかも 咲きにほふらむ 橘の 小島の崎の 山吹の花

 

よみ人知らず

 

 今ごろは美しく咲いているだろうか。橘の小島の崎の山吹の花は。

 「橘の小島」は宇治川にあったとされ、「崎」はその先端の意と考えられています。


古今和歌集 0120

2020-02-27 19:50:22 | 古今和歌集

わがやどに さけるふぢなみ たちかへり すぎがてにのみ ひとのみるらむ

わがやどに さける藤波 立ちかへり 過ぎがてにのみ 人の見るらむ

 

凡河内躬恒

 

 我が家に咲いている藤が連なって波のようになっているから、寄せては返す波のように行きつ戻りつしながら人が見て行くのだろう。

 自宅の庭で咲き誇る藤の花が通りゆく人の目を惹いている様子を嬉しく思う気持ち。

 


古今和歌集 0119

2020-02-26 19:50:22 | 古今和歌集

よそにみて かへらむひとに ふぢのはな はひまつはれよ えだはをるとも

よそに見て かへらむ人に 藤の花 はひまつはれよ 枝は折るとも

 

僧正遍昭

 

 花をよそよそしく見るだけで帰ろうとする人を、藤の花よ、たとえ枝が折れても蔓を絡みつかせて引きとどめておくれ。

 詞書の記載を含めての解釈になりますが遍昭が住持する寺を訪れても、きちんと参詣しないで(あるいは遍昭に注意や関心を払わずに)すぐに帰って行ってしまおうとする女性たちを引き留めたい気持ちを詠んでいます。憎からず思う女性とは言え、僧形に身をやつす遍昭自身が直接それを引き留めるようなことはできないので、それを藤の花に託す思いですね。

 

 


古今和歌集 0118

2020-02-25 19:42:09 | 古今和歌集

ふくかぜと たにのみづとし なかりせば みやまがくれの はなをみましや

吹く風と 谷の水とし なかりせば 深山がくれの 花を見ましや


紀貫之

 吹く風と谷の水がなかったならば、深い山に隠れて咲く花をどうして見ることができようか。

 深い山の中に咲く、普通なら目にすることがない花も、散った花びらが吹く風や谷からの水の流れに運ばれることで見ることができる、ということですね。風に散る花びらを見て、遠くの山から風で運ばれてきたとはなかなか思わない(感じられない)だろうと私などは思います。歌合せで詠まれた歌とのことですので、実際の風景ではなく空想上の歌なのかもしれません。