漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 228

2023-11-30 05:41:24 | 貫之集

ほととぎす こゑききしより あやめぐさ かざすさつきと しりにしものを

時鳥 声聞きしより あやめ草 かざす五月と 知りにしものを

 

時鳥の初音を聞いたときから、あやめ草を髪にかざす五月になったと知っていたのに、ようやくその簪を挿すことができた。

 

 詞書は 227 と共通で、「菖蒲とれるところ、またかざせるもあり」の後段に対応する歌ということになります。一枚の屏風に2つの絵が描かれているのでしょうね。
 この歌は新勅撰和歌集(巻第三「夏」 第153番)に入集しています。


貫之集 227

2023-11-29 05:28:43 | 貫之集

菖蒲とれるところ、またかざせるもあり

あやめぐさ ねながきとれば さはみづの ふかきこころは しりぬべらなり

あやめ草 根長きとれば 沢水の 深き心は 知りぬべらなり

 

菖蒲をとったところ、また髪に挿している者もあり

根の長いあやめ草を取ると、それが生えていた沢の水の深い風情がよくわかるであろう。

 

 同じ「菖蒲」という漢字を書く「あやめ」と「しょうぶ」が違う植物だということを10年近く前にこのブログで記事にしましたが、今回改めて Weblio古語辞典 で検索してみたところ

あやめ 【菖蒲】
名詞
草の名。しょうぶ。

しゃう-ぶ 【菖蒲】
名詞
水辺に群生する草の名。あやめ草。

とあり、なんだか良くわからなくなってきました。^^;;;

 

 


貫之集 226

2023-11-28 07:28:43 | 貫之集

大神の祭に詣でたる

いにしへの ことならずして みわのやま こゆるしるしは すぎにぞありける

いにしへの ことならずして 三輪の山 越ゆるしるしは 杉にぞありける

 

大神神社の祭りに詣でた

それほど昔のことなくても、三輪山を越えてお詣りする際の目印は、杉なのであるよ。

 

 145 に続いて、大神(おほみわ)神社の祭礼を詠んだ歌。第1句・第2句は、そちらでも紹介した 古今集0982 採録の古歌で「杉立てる門」と詠まれていることを踏まえ、「その昔からそう詠まれているが今でもなお」の意ですね。


貫之集 225

2023-11-27 06:12:30 | 貫之集

ちりぬとも あだにしもみじ ふぢのはな ゆくさきとほく まつにさければ

散りぬとも あだにしも見じ 藤の花 行くさき遠く 松に咲ければ

 

散ってしまったとしても、藤の花が移り気だとは思うまい。常緑の松にかかって、いつまでも咲いていたのだから。

 

 詞書は一つ前の 224 と共通(「松に咲ける藤の花」)です。222224、この225と、散る花に「あだなり(はかない、もろい意)」の語をそえた歌が続いていますね。


貫之集 224

2023-11-26 05:17:09 | 貫之集

松に咲ける藤の花

ふぢのはな あだにちりなば ときはなる まつにたぐへる かひやなからむ

藤の花 あだに散りなば 常盤なる 松にたぐへる かひやなからむ

 

松にからんで咲いている藤の花

藤の花がはかなく散ったならば、常緑の松に寄り添っている甲斐がないではないか。

 

松と藤、定番の組み合わせですね。
この歌は新拾遺和歌集(巻第二「春下」 第184番)に入集しています。