松が崎
たなびかぬ ときこそなけれ あきもなき まつがさきより みゆるしらくも
たなびかぬ ときこそなけれ 秋もなき 松が崎より 見ゆる白雲
松が崎
たなびいていないことなどない。松の緑で秋の訪れをも知らない松が崎から見える白雲は。
「松が崎」は京都の地名。「松」の名に準えて、松が常緑(=紅葉しない)であることから「秋を知らない地」と洒落て見たというところでしょうか。歌意を端的に書けば「松が崎ではいつも白雲がたなびいている」ということですが、161 の詞書にあった通り、この歌は左大臣藤原忠平の奥方に奉呈されたもの。白雲がたなびく屏風絵が置かれた忠平の邸宅が松が崎の地にあったということなのかもしれません。