漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

「ふがいない」お話し

2014-12-31 14:15:37 | 雑記
 先日、とあることで少々「ふがいない」思いをしたのですが、その際 【不甲斐ない】 という表記が頭に浮かび、「あれ?」と気づきました。語尾の「~ない」で否定しているのですから、【不甲斐】は明らかにおかしいです。お恥ずかしいことに、今まで漢字表記をちゃんと考えたことがなく、正しい表記も知らなかった(多分、書く機会があったら 【不甲斐】 と書いていただろうと思います。)のですが、正しくは 【腑甲斐ない】 と書くんですね。「漢検 漢字辞典」にもちゃんと載っています(初版 P.1319/第二版 P.1332)・・・と思ったら、「辞典」に「『不甲斐ない』とも書く」との記載があってもう一度びっくり。もちろん本来は誤用ですが、そう書く人が多くなって、すでに許容されるに至っているのですね。

 というわけで、「ふがいない」というありふれた言葉の正しい漢字表記を今頃初めて知ったという、1級ホルダーとしてはまさに 【腑甲斐ない】 お話しでした。(ついでに今発見しましたが、マイクロソフトのIMEで「ふがいない」と入力して変換しても「不甲斐ない」しか出てこないですね・・・)



 あっという間に大晦日。今年1年、拙いブログにおつきあいいただきましてありがとうございました。2度の合格のあと中断していた勉強を再開して約2年になり、その間、本試験でさらに4度の合格を積み重ねることができましたが、モチベーションを失わずに続けてこれたのは、このブログを見て下さる沢山の皆さんのおかげです。しばらく更新が途絶えていても変わらずご来訪くださる方々が大勢おられることが、本当に励みになっています。少し、受検に対するスタンスを変えようかと思っていますが、いずれにしても本ブログは続けて行きますので、来年からもどうぞよろしくお願いいたします。 m(_ _)m

文学忌

2014-12-27 14:12:11 | 雑記
 きょう12月27日は、児童文学作家 椋鳩十(むくはとじゅう)の命日。「夕焼忌」というのだそうです。

 というわけで、数ある文学忌について改めて調べてみました。漢検に出るというよりはクイズの題材という感じですが、有名どころで、名前そのままではないものだけでも結構ありますね。


1月11日   一一一忌   山本有三
 「いちいちいちき」と読みます。もちろん、「有三」の「三」にもちなんだものでしょう。

2月3日   雪池忌   福澤諭吉
 これは知りませんでした。何と読むのかと思ったら「ゆきちき」。「諭吉」に違う字を当てたのですね。

2月12日   菜の花忌   司馬遼太郎
 これは有名ですね。著作「菜の花の沖」にちなんだものでしょうか。

3月24日   檸檬忌   梶井基次郎
 説明不要ですね。 【檸】 【檬】 いずれも1級配当漢字。

5月29日   白桜忌   与謝野晶子
 生前、自ら「私の戒名には白桜院を」と周囲の人々にもらしており、それを受けて法名は「白桜院鳳翔晶輝大姉」。なので命日を「白桜忌」と呼びますが、なぜか「白桃忌」と誤記(誤認)されているケースが多いようです。

6月10日   薄桜忌   宇野千代
 同じ「はくおうき」でもこちらはうすざくら。しかし今時「はくおうき」と言ったら、アニメの「薄桜鬼」のこととしか思われませんね。(笑)

6月19日   桜桃忌   太宰治
 こちらも著名ですね。死の直前の作品「桜桃」に由来。漢検的には、熟字訓 【桜桃(さくらんぼう)】 も覚えておきたい?

7月1日   橄欖忌   瀧口修造
 瀧口修造は美術評論家にして詩人・画家。自宅にオリーブの木が植えられていたことに由来するとか。熟字訓としての 【橄欖(オリーブ)】 はもちろんですが、 【橄欖(かんらん)】 もそのうち書き取りに出そうな言葉ですね。

7月28日   石榴忌   江戸川乱歩
 「ざくろき」。作品名に由来。一般にはあまり知られていない著作ですが、一部では名作の誉高い作品のようです。

7月24日   河童忌   芥川龍之介
 これも説明は不要ですね。作品名から。

7月30日   蝸牛忌   幸田露伴
 居宅を「蝸牛庵」を号したことに由来。作品は本試験の文章題で最頻出と言ってよい作家ですし、【蝸】は1級配当ですから、そのうちこの「蝸牛忌」も問われるでしょうか。

9月3日   迢空忌   折口信夫
 詩人・歌人としては釈迢空と名乗ったことから。「迢空忌」はともかくとして、【迢迢(ちょうちょう)】【迢(はる)か】 など、漢検的におさえておきたい漢字ですね。

9月19日   獺祭忌   正岡子規
 「糸瓜忌」とも言われるようですが、「獺祭忌」の方が有名ですね。 【獺祭魚】 となると、「詩文を作るとき、多くの参考書を周囲に広げること。」の意。三文字熟語として狙われる?

11月25日   憂国忌   三島由紀夫
 国の行く末を憂えて割腹自殺した三島の命日。当時私は小学生でしたが、この日のことはおぼろげながら記憶にあります。その意味するところはわかってはいませんでしたが、なにか大変なことがおきたんだなぁと感じていました。


 少し変わったところではこんなのも。

2月19日   アンドロメダ忌   埴谷雄高
12月30日   ホシヅル忌   星新一



 なんだか、大学入試向けの文学史の記事のようになってしまいましたね。(笑)


詩人は四字熟語がお好き?

2014-12-23 15:26:50 | 四字熟語
 今日は四字熟語のお話し。
 「辞典」を眺めていて、 【石破天驚】 という四字熟語が目にとまりました。詩や文章が巧みであることのたとえで、漢検の級では4級配当とのこと。四字熟語の配当級は、使われている漢字の配当級で決められているようですが、四字熟語自体の使用頻度も考慮すべきですよね。まあ、実際の出題はそうなっているようなので良いのですが。。。

 さて、これを見て、そう言えば詩人や詩文に関係する四字熟語がたくさんあったなと思ったので、まとめてみました。書き取りの練習にどうぞ。



<問題>

1 がいだせいしゅ
  権勢の盛んなさま。詩文の才が豊かなさま。

2 げっかすいこう
  詩文の字句・表現をあれこれ工夫をこらし、完成を目指すこと。

3 いっしょういちえい
  ひと杯の酒を飲んで一つの詩を作る。

4 いっしょうさんたん
  すぐれた詩文を称賛する語。

5 がんえいしょか
  文章のすぐれた部分をよく味わい、心の中に蓄積すること。詩文に妙味があることのたとえ。

6 けいしせんだん
  有徳の人の形容。すぐれた詩文のたとえ。

7 しぼくとごう
  文人。詩文を作る人。

8 きょくすいりゅうしょう
  曲折した水の流れに杯を浮かべ、それが自分の前を流れすぎないうちに詩を作り、盃の酒を飲むという風雅な遊び。

9 りんろうしゅぎょく
  非常に美しい玉。すぐれた人物や美しい詩文のたとえ。

10 こうきんげきせき
  詩文の美しいリズムを、打楽器の美しい音色にたとえた言葉。

11 ちんうつとんざ
  詩文の風格が高く内容が深くて文章中の字句の意味がすらすらと通らず、滞ること。

12 ひょうおうせつわん
  清らかで上品な文具のこと。また、それを用いて詩文を写すこと。

13 しじんぜいこつ
  銘茶をたたえる語。また、銘茶のこと。すぐれたお茶は詩人の感性までもすぐれたものに変えてしまうことをいう。

14 ちょうふうろうげつ
  風や月を題材にして詩歌を作ること。

15 せきはてんきょう
  このうえなく音楽が巧妙なこと。また、詩文が非常に奇抜ですぐれていること。

16 おうようろらく
  初唐の四人の詩の大家。王勃、楊炯、盧照鄰、駱賓王。

17 はきょうろじょう
  詩を作るのに絶好な場所のこと。



<解答>
 かっこ内の数字は、「漢検 四字熟語辞典」初版の掲載ページです。

1  【咳唾成珠】   (P.119)
2  【月下推敲】   (P.178)
3  【一觴一詠】   (P.84)
4  【一倡三歎】   (P.84)
 これ自体は1級配当ですが、「一唱」「三嘆」でもOKなので、実際に1級の問題としては出そうにないですね。
5  【含英咀華】   (P.133)
6  【瓊枝栴檀】   (P.174)
7  【子墨兎毫】   (P.240)
8  【曲水流觴】   (P.158)
9  【琳琅珠玉】   (P.474)
10  【敲金撃石】  (P.189)
11  【沈鬱頓挫】  (P.343)
12  【氷甌雪椀】  (P.406)
13  【詩人蛻骨】  (P.233)
14  【嘲風哢月】  (P.340)
15  【石破天驚】  (P.290)
16  【王楊盧駱】  (P.113)
 人の名前を4つ並べただけの語なので、まず出題はされないでしょう。
17  橋驢上】   (P.380)
 「」は漢検配当外。なので出題されることはありません。こういう熟語が載っているのが、「漢検 四字熟語辞典」の不思議なところ。

 不思議ついでですが、この中に平成15年以降の本試験で出題されたことのある熟語は一つもありません。単なる偶然だとは思いますが、ちょっとびっくりしました。



(  は島根県立大学e漢字フォント  の漢字フォントを使用しました。)

研修会に参加してきました

2014-12-21 20:38:25 | 雑記
 きょうは楽しみにしていた研修会の日でした。
 阿辻先生の講義も楽しかったですが、ブログのコメントなどを通じてやりとりさせていただいている方を始めとして、何人かの会員の皆さんとお話しすることができました。


 「漢字のひととき。~漢字と漢検をもっと楽しむブログ~」 の fuji-moca さん

 
 「再挑戦!漢字学習」 の Yuki さん

 本ブログに折々にコメントをくださる 秀まろ さん

 他にも楷の木のNさん、お住まいが私と同じ地域で、1級取得を目指して勉強されているKさん、Sさんなどなど。1時間ほどの短い時間でしたが、同じ目標に向かって励んでいらっしゃる皆さんとの語らいの時間は格別で、機会がありましたらぜひまた参加したいと思いました。

 きょうお話しくださった皆さん、ありがとうございました。 ^^

【盧】 は頻出

2014-12-20 08:48:27 | 演習問題
 今朝、いつものWEB問題集サイトに行くと、冒頭に「あと50日」と出ていました。だいぶ近づいてきましたね。前回同様、新しい言葉の勉強も過去問や既往知識の復習もはかどっていませんが、まあ例によってマイペースで。

 確か1年くらい前にも記事にしたかと思いますが、 【盧】 を含んだ漢字は過去問でも頻出ですし、いかにもそのうち出そうな言葉、熟語も多いです。ちょっと気を抜いていると混同してしまうので、きょうは問題形式にしてみました。定着を図りたいと思います。


<問題>

1  対義語 【隠栖】 ⇔ 【シュツロ】
2  四字熟語  【タイロ】撫琴
3  故事・諺  【ケンロ】の技
4  書き取り  【ロクロ】を回す
5  四字熟語  【ロメイ】犬吠
6  四字熟語  蓴羹【ロカイ】 
7  故事・諺  【ロザン】の真面目
8  四字熟語  【ジクロ】千里
9  四字熟語  【ソウロ】三顧
10  故事・諺  【ロセイ】の夢
11  訓読み  【鑪】を囲む
12  四字熟語  天宇【チロ】
13  書き取り  【ロチョウ】 (意味:頭のてっぺん)




<解答>
 かっこ内の数字は、四字熟語は「漢検 四字熟語辞典」初版、その他は「漢検 漢字辞典」初版/第二版 の掲載ページです。

1.  【出廬】  (P.706/P.712)
 対義語問題の正解として4度出題の超頻出語。

2. 【対驢】 撫琴  (P.322)
 愚かな者に物の道理を説いても役に立たないたとえ。ロバに向かって琴を弾いて聞かせる、ということですね。ロバに失礼? (笑)

3. 【黔驢】 の技  (P.430/P.434)
 自分の腕が悪いのを自覚せず恥をかくこと。とるにたりない腕前。25-2 で出題。

4. 【轆轤】  (P.1607/P.1623)
 19-1 で出題。

5. 【驢鳴】 犬吠  (P.479)
 稚拙でつまらない文章や聞くに堪えない話のたとえ。ロバが鳴いたり犬が吠えたりしているのと変わらない意。ロバと犬に失礼では? (笑笑)

6. 蓴羹 【鱸膾】  (P.253)
 故郷を懐かしく思う情。19-3、24-3 で出題。

7. 【廬山】 の真面目  (P.1594/-)
 物事の真相や実際の姿のこと。「辞典」初版の見出しにありますが、なぜか第二版には載っていません。

8. 【舳艫】 千里  (P.229)
 多数の船がはるか彼方まで連なること。18-3、20-2 で出題。

9. 【草廬】 三顧  (P.311)
 礼を尽くして有能な人材を招くこと。「三顧の礼」と同じですね。

10. 【盧生】 の夢  (-/P.1610)
 人の世の栄華がはかないたとえ。【邯鄲之夢】 に同じ。こちらは「辞典」初版になく、第二版では見出しになっています。ということは出題要注意?? (笑)

11. いろり  (P.1596/P.1612)
 普通は 【囲炉裏】 ですね。第二版では、「ふいご」との読みも追加されています。

12. 天宇 【地廬】  (P.349)
 天と地。【天宇】⇔【地廬】の対義語関係にも注意したいですね。

13. 【顱頂】  (P.1596/P.1613)
 頭のてっぺん。かしらのいただき。頭頂。四字熟語 【円顱方趾】(まるい頭と四角い足。人類のこと。) も覚えておきたい。