女ども山寺に詣でしたる
おもふこと ありてこそゆけ はるがすみ みちさまたげに たちわたるかな
思ふこと ありてこそゆけ 春霞 道さまたげに 立ちわたるかな
女たちが山寺に詣でる
心に悩みがあり、救いの道を求めて山寺に行くのに、まるでそれを妨げるかのように、春霞が一面に立ちわたっていることよ。
「道」は山寺への道と「仏道」の両義ですね。
この歌は拾遺和歌集(巻第十六 「雑春」 第1017番)にも採録されており、そちらでは第五句は「たちなかくしそ」となっています。歌に込めた思いに違いはありませんが、貫之集ではすでに霞立ち込めて実際に道を見えづらくしており、拾遺集では「霞よ、立ち込めて道を隠すでないぞ」ということですからまだ霞は立っていないということで、情景は異なっていますね。題材となった屏風絵はどうなっていたのでしょうか。まだ道を覆い隠すほどではない程度の霞が描かれていたのかな?