漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0518

2021-03-31 19:19:13 | 古今和歌集

ひとのみも ならはしものを あはずして いざこころみむ こひやしぬると

人の身も ならはしものを あはずして いざこころみむ 恋ひや死ぬると

 

よみ人知らず

 

 人の身も習慣によってどのようにもなるのだから、いとしい人と会わずにいて果たして恋死にするものかどうか、さあ、試してみよう。

 恋が叶うなら死んでもかまわないという 0517 に対して、人はどんなことにも慣れていくのだから、会わずにいると本当に恋死にしてしまうかどうか、試してみようではないかという詠歌。撰者による配列の演出ですね。^^

 


古今和歌集 0517

2021-03-30 19:13:12 | 古今和歌集

こひしきに いのちをかふる ものならば しにはやすくぞ あるべかりける

恋しきに 命をかふる ものならば 死にはやすくぞ あるべかりける

 

よみ人知らず

 

 恋しい気持ちが命と引き換えにかなうのならば、死さえもたやすいものと思えることよ。

 この恋が実るのならば命と引き換えでも構わない、との壮絶なまでの思いです。


古今和歌集 0516

2021-03-29 19:40:25 | 古今和歌集

よひよひに まくらさだめむ かたもなし いかにねしよか ゆめにみえけむ

宵々に 枕定めむ 方もなし いかに寝しよか 夢に見えけむ

 

よみ人知らず

 

 毎夜毎夜、枕をどちらに向けて寝れば良いのかわからない。あの人が夢に出てきてくれたのは、どちらに向けて寝たときだったのだろうか。

 せめて夢の中ででもいとしい人に会いたいという切ない思い。


古今和歌集 0515

2021-03-28 19:27:02 | 古今和歌集

からごろも ひもゆふぐれに なるときは かへすかへすぞ ひとはこひしき

唐衣 ひもゆふぐれに なる時は 返す返すぞ 人は恋しき

 

よみ人知らず

 

 唐衣の紐を結う夕暮れ時には、繰り返しあの人のことが思い出されて恋しくなることよ。

 「唐衣」は「紐」に掛かる枕詞で、「ひも」は「紐」と「日も」の掛詞になっています。下紐が解けることはいとしい人に会える前兆と考えられており、夕暮れになってそれを結ぶ際には、逆にその人のことが思い出されて恋しくなるという詠歌です。


古今和歌集 0514

2021-03-27 19:21:15 | 古今和歌集

わすらるる ときしなければ あしたづの おもひみだれて ねをのみぞなく

忘らるる 時しなければ 葦鶴の 思ひ乱れて 音をのみぞなく

 

よみ人知らず

 

 あの人のことを忘れられる時はないので、葦鶴が乱れ飛んで声を出して鳴くように、私も思い乱れて声を上げて泣くのであるよ。

 「葦鶴」は葦の中にいる鶴。「なく」は「(葦鶴が)鳴く」と「(私が)泣く」の掛詞になっています。叶わぬ恋を忘れることもできず、一人心乱れて涙する作者の切ない心情を詠んでいますね。