いろのみぞ まさるべらなる いそのまつ かげみるみづも みどりなりけり
色のみぞ まさるべらなる 磯の松 影見る水も 緑なりけり
色がますます濃くなってきたのであろう。磯の松の姿を映して見せる水までもが、すっかり緑色に染まっているよ。
貫之得意のリフレクションの詠歌ですが、松を題材にしたものは少ないようです。
いろのみぞ まさるべらなる いそのまつ かげみるみづも みどりなりけり
色のみぞ まさるべらなる 磯の松 影見る水も 緑なりけり
色がますます濃くなってきたのであろう。磯の松の姿を映して見せる水までもが、すっかり緑色に染まっているよ。
貫之得意のリフレクションの詠歌ですが、松を題材にしたものは少ないようです。
ちよまでの ゆきかとみれば まつかぜに たぐひてたづの こゑぞきこゆる
千代までの 雪かと見れば 松風に たぐひて田鶴の 声ぞ聞こゆる
松に降りかかる雪かと思って見たら、風に合わせて鳴く真っ白な鶴の鳴く声が聞こえた。
雪と松と鶴の組み合わせは 051 にもありました。屏風絵に良く書かれる構図なのかもしれませんね。
をしみにと きつるかひなく さくらばな みればかつこそ ちりまさりけれ
惜しみにと 来つるかひなく 桜花 見ればかつこそ 散りまさりけれ
散ってしまうのは惜しいと思って見に来たかいもなく、桜の花は見れば見るほどますます散っていくことよ。
一つ前の 072 と同じモチーフの詠歌ですね。続けて収録されていることからも、同じ屏風絵に基づく歌なのかもしれません。
みてのみや たちかくしてむ さくらばな ちるををしむに かひしなけれは
見てのみや 立ちかくしてむ 桜花 散るを惜しむに かひしなければ
ひとしきり見たらどこかに隠してしまおうか。桜の花は、放っておくと惜しむ甲斐もなく散ってしまうのだから。
まあ、身も蓋もないことをあえて言えば、どこかに隠したところでやっぱり桜は散ってしまうわけですが、心情としてはとても良くわかりますね ^^
よのなかに たえてさくらの なかりせば はるのこころは のどけからまし
世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし
在原業平
ひともなき やどににほへる ふぢのはな かぜにのみこそ みだるべらなれ
人もなき 宿に匂へる 藤の花 風にのみこそ 乱るべらなれ
人けもない宿に匂っている藤の花が、風だけには乱れているようだ。
手元の解釈書によると、「風」と「藤の花」を男女に擬人化した意味もあるとのこと。なるほどですね。