道行く人の初雁を聞く
ことづても とふべきものを はつかりの きこゆるこゑは はるかなりけり
ことづても とふべきものを 初雁の 聞こゆる声は はるかなりけり
道行く人が初雁の声を聞いている
今年初めて来訪した雁に、遠い場所からの言伝も聞きたいところだが、聞こえる声はまだ遠くかすかであるよ。
「初雁」は秋に初めて北方から渡って来る雁のこと。076 と同じく、蘇武の「雁信」の故事を踏まえての詠歌です。
道行く人の初雁を聞く
ことづても とふべきものを はつかりの きこゆるこゑは はるかなりけり
ことづても とふべきものを 初雁の 聞こゆる声は はるかなりけり
道行く人が初雁の声を聞いている
今年初めて来訪した雁に、遠い場所からの言伝も聞きたいところだが、聞こえる声はまだ遠くかすかであるよ。
「初雁」は秋に初めて北方から渡って来る雁のこと。076 と同じく、蘇武の「雁信」の故事を踏まえての詠歌です。
家に、女月を見る
おもふこと ありとはなしに ひさかたの つきよとなれば いこそねられね
思ふこと ありとはなしに 久方の 月夜となれば いこそ寝られね
家で、女が月を見ている
もの思いしているというわけではないが、月夜となるとその美しさになかなか寝られない。
「久方の」は「月」にかかる枕詞。
この歌は拾遺和歌集(巻第八「雑上」 第433番)に入集していますが、そちらでは第五句は「寝られざりけり」とされています。
秋の風、荻の葉を吹く
いつもきく かぜをばきけど をぎのはの そよぐおとにぞ あきはきにける
いつも聞く 風をば聞けど 荻の葉の そよぐ音にぞ 秋は来にける
秋の風が荻の葉に吹きかかっている
いつも聞くのと同じ風の音であるけれども、荻の葉のそよぐ音に、秋が来たのだとわかる。
風そのものはいつもと同じだけれども、その風に荻の葉がそよぐ音が混じることで秋の到来を実感するという歌。風情を感じますね。
この歌は続後撰和歌集(巻第五「秋上」 第244番)に入集しており、そちらでは初句が「いつもふく」とされています。
男女、舟に乗りて遊ぶ
まちつけて もろともにこそ かへるさの なみよりさきに ひとのたつらむ
待ちつけて もろともにこそ かへるさの 波よりさきに 人の立つらむ
男女が、舟に乗って遊んでいる
待ち受けて一緒に帰ろうと思っているのに、あの人はどうして波が立つよりも先に帰ってしまうのでしょう。
「待ちつく」は待ち受けて出会う、待ち迎える意。第三句「かへる」は「(波が)返る」と「(相手が)帰る」の掛詞、第五句「立つ」は「波」の縁語ですね。