漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0428

2020-12-31 19:45:59 | 古今和歌集

いまいくか はるしなければ うぐひすも ものはながめて おもふべらなり

今いくか 春しなければ 鶯も ものはながめて 思ふべらなり

 

紀貫之

 

 春は今からもう幾日もないので、鶯も物思いにふけっているのだろう。

 過ぎゆく春を惜しんで鶯が鳴いているという歌。「うぐひすも ものはながめて」に「すももの花」が詠み込まれています。「ものはながめて」は、物名歌とするために、少々無理をした表現になっていますね。

 

 さて今日は大晦日。このブログを始めたのは昨年の10月末ですから、今年一年は一日も欠かさずアップすることができたことになります。正直なところ、コロナのために在宅する時間が長かったことも手伝っていると思いますが、まあ何にしても続けて来られて良かったです。毎日お付き合いいただいた皆さまに、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
 細々と続けていきますので、来年もどうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

 


古今和歌集 0427

2020-12-30 19:12:44 | 古今和歌集

かづけども なみのなかには さぐられで かぜふくごとに うきしずむたま

かづけども 波の中には さぐられで 風吹くごとに 浮き沈む玉

 

紀貫之

 

 水に潜っても、波の中にはみつけることができず、風が吹くたびに浪間に浮き沈みする玉であるよ。

 隠し題は「なみのなかには さぐられで」と詠み込まれている「かにはざくら」。現在では樺桜(かばざくら)と呼ばれている桜のこと。「かづく」は水に潜る意で、泡立つ波を玉に見立て、それが水中では見つけられないと詠んでいます。歌意的には「だから何?」と言いたくなる系(失礼!)の歌ですが、六文字と比較的長い言葉をうまく詠み込んだ物名歌として楽しみましょうか。

 


古今和歌集 0426

2020-12-29 19:03:45 | 古今和歌集

あなうめに つねなるべくも みえぬかな こひしかるべき かはにほひつつ

あな憂目に 常なるべくも 見えぬかな 恋しかるべき 香はにほひつつ

 

よみ人知らず

 

 なんと辛いことに、このまま咲き続けるようには見えないことだな。恋しく感じる香りは漂い続けているのに。

 隠し題は「あなうめに」の「梅」で、二文字の物名歌というのもあるのですね。二文字だと、例えば第二句に「つねなるべくも」と「雲」が入っているように、意図せずに物名が入ってしまうこともままあるだろうと思いますが、この歌の場合は内容自体が梅の花を詠んでいますね。


古今和歌集 0425

2020-12-28 10:51:19 | 古今和歌集

たもとより はなれてたまを つつまめや これなむそれと うつせみむかし

袂より はなれて玉を つつまめや これなむそれと 移せ見むかし

 

壬生忠岑

 

 袂以外のものでどうして玉を包むことができましょうか。これがその玉だと移してみなさい。消えてしまうかどうか、私も見てみるから。

 0424 への返歌。内容として返しになっているだけでなく、隠し題の「うつせみ」も踏襲しています。


古今和歌集 0424

2020-12-27 19:09:26 | 古今和歌集

なみのうつ せみればたまぞ みだれける ひろはばそでに はかなからむや

波の打つ 瀬見れば玉ぞ 乱れける 拾はば袖に はかなからむや

 

在原滋春

 

 波の打ち寄せる浅瀬を見ると玉が散り乱れている。けれどもそれを拾って袖に入れたならば、はかなく消えてしまうだろうか。

 「なみのうつ せみればたまぞ」に「うつせみ(空蝉)」が詠み込まれています。
 波が打ち寄せて泡立っているのを玉に見立て、綺麗なので拾って持って帰りたいが、袖に入れれば消えてしまうなぁというわけですね。

 

(昨日アップした 0423 ですが、何故か歌と作者だけになっていて、書いたはずの解釈等が消えてしまっていました。改めて記載しましたので、よろしければご覧ください。)