漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

そっくりな字

2015-08-29 13:53:20 | 雑記
 『【皃】と【兒】』の記事で、【貌(ボウ/かたち)】 と 【貎(ゲイ/しし)】 がそっくりで区別がつきにくというお話しをしたのですが、そう言えば、ということで。



【皙】  (「漢検 漢字辞典」初版 P.871/第二版 P.878)
音 : セキ
訓 : しろ・い  (なつめ)
 【白皙/皙い(はくせき/しろ・い)】 などと熟語の読み・一字訓読み問題でそのうち出ないかなと思っていますが、この 【皙】 にそっくりな字が2つ。


  (871/878)
音 : セキ
訓 : あき・らか
 上の 【皙】 の下の部分の 【白】 が 【日】 に変わっただけで、これまた小さいフォントだとほとんど区別がつきません(笑)。もっとも、正字 【晰】 の異体字なので、実際には余り出てこないですね。熟語としては、「下つき」欄に 【明晰】 だけが「辞典」に出ています。


【晢】  (877/885)
音 : セツ  セイ
訓 : あき・らか  (かしこ・い)
 こちらは上の 【晰】 とは逆に、構成要素を縦に並べたこの字が正字で、「日へん+折」と、横に並べた方が異体字です。理由を調べても何も出てこないでしょうけれど、紛らわしいというか面白いというかという感じですね。「辞典」の「下つき」欄に 【昭晢(しょうせつ)】 という熟語が出ています。「漢辞海」によれば、「明るい」意とのこと。



 こうやって細かく見て行くと、まだまだ新しい気づきがたくさんあります。漢字の学習は楽しいですね。



【兪】 その2

2015-08-24 00:10:10 | 雑記
 せっかくですから、【兪】 を構成要素とする他の漢字もまとめておきましょう。ホントに沢山ありますね。



【喩】  (「漢検 漢字辞典」初版 P.1487/第二版 P.1503)
音 : ユ
訓 : たと・える  さと・す  (よろこ・ぶ)
 2010年の改訂で追加された常用漢字ですね。それまでは1級配当でした。【比喩】【暗喩】は「たと・える」意、【喩告】【喩説】は「さと・す」意での用例。 「よろこ・ぶ」 は、「辞典」第二版で追加された訓です。


【愉】  (1487/1503)
音 : ユ
訓 : たの・しい  たの・しむ


【揄】  (1487/1503)
音 : ユ  (トウ)
訓 : -
 【揶揄(やゆ)】 で余りにも有名。第二版で追加された「トウ」との音の用例は見つけられませんでした。小さい字で熟語だけが「辞典」に記載されている 【揄揚】 は 「ユヨウ」 ですね。意味は「引き上げる/引き上げほめる」とのこと。(「漢辞海」より)


【渝】  (1487/1503)
音 : ユ
訓 : か・わる  (か・える)  (あふ・れる)
 【渝わる】 は、読み問題として 17-1、20-1、23-3、26-2 で出題の超頻出語。書き問題だと 【変わる】 と書かれても誤答にできないでしょうから、まず書かされることはないでしょう。


【楡】  (1487/1504)
音 : ユ
訓 : にれ
 単独の訓以外では、熟字訓の 【地楡(われもこう)】【榔楡(あきにれ)】 は覚えておきたいところ。26-2 では、故事・諺問題として 【桑楡(そうゆ)且に迫らんとす】 が出題されています。


【瑜】  (1487/1504)
音 : ユ
訓 : -
 「美しい玉」を意味する 【瑾瑜(きんゆ)】 は押さえておきたい。【瑾を壊き瑜を握る】との成句(内に高徳をもっている人のたとえ)もあります。


【逾】  (1487/1504)
音 : ユ
訓 : こ・える  いよいよ  (こ・す)
 

【蝓】  (1487/1504)
音 : ユ
訓 : -
 熟字訓  【蛞蝓(なめくじ)】 が、書き取り問題として何度か出題されていますね。それ以外の用例は特にないようです。音読みでは「てんゆ」。


【覦】  (1488/1504)
音 : ユ
訓 : (のぞ・む)  (ねが・う)  (こいねが・う)
 【覬覦(きゆ)/覬(のぞ)む】 は熟語の読み・一字訓読み問題の定番ですが、【覦】 の方の訓は、「辞典」初版に記載がなく、出題もされていません。第二版に訓が追加されましたから、いずれこちらも出されるでしょうか。


【諭】  (1488/1504)
音 : ユ
訓 : さと・す
 常用漢字。使用頻度の高い字ように思いますが、配当は準2級ですから、かなり高学年になってから習う字なのですね。


【踰】  (1488/1504)
音 : ユ
訓 : こ・える  こ・す
 訓読み問題で出題されたのは 16-2 ですから、もう随分前のことになりますね。


【輸】  (1488/1504)
音 : ユ  シュ
訓 : おく・る  (うつ・す)  (いた・す)  (ま・ける)
 【贏輸(えいしゅ)】 が 18-1 音読みと 24-3 語選択書き取り、 【輸贏(しゅえい)】 が 15-1 音読みと 26-3 書き取りで出題。「えいゆ」「ゆえい」とも読むようです。



【兪】

2015-08-23 15:07:10 | 雑記
 まだまだ暑いですが、私のところでは、その中にも秋の気配を感じる瞬間も増えてきたように思います。もういい歳(?)ですので猛暑酷暑が一段落して涼しくなっていくのはありがたいですが、一方で何やら寂しさを感じる季節でもありますね。

 このところ一時期よりは時間を取れる日もあって、細々とですが漢字の勉強も進めています。と言っても知識を増やすというところまでは手が回らないので、手元に溜めた問題の復習が主ですが、それでも改めて調べてみると新しい発見もあって、やはり勉強するのは楽しいものです。


 さて、きょうは 【兪】 について。


【兪】 (「漢検漢字辞典」初版 P.1487/第二版 P.1503)
音 : ユ
訓 : しか・り
 【兪り】 の訓読みは必須と思いますし、また言うまでもなく、実に多くの漢字の構成要素になっている重要な漢字ですね。学習中の「白川文字学」によれば、この文字の成り立ちは、『把手のある手術刀で患部を刺して膿漿(うみしる)を盤に移しとること。これによって治癒する。』とのことで、現在 【治癒】 などと使われる 【癒(ユ/い・える、い・やす)】 の元の字形だそうです。 


【愈】  (1487/1503)
音 : ユ
訓 : いよいよ (い・える) (い・やす)
 【兪】 に 【心】 が付いた字ですが、【心】 だけが付いたこの 【愈】、 「やまいだれ」だけがついた 【瘉】、 【心】 と「やまいだれ」 の両方が付いた 【癒】 の3つが全部漢字として存在しているのが面白いですね。なお 「い・える」 「い・やす」 は、「辞典」初版にはなく、第二版で追加記載された訓です。


【瘉】  (1488/1504)
音 : ユ
訓 : い・える  い・やす
 「辞典」初版では、次の 【癒】 の異体字との扱いでしたが、第二版では独立した見出し字の扱いに変わっています。1級で 「ちゆ」 の書き取りが出題されたら、【治瘉】 と書いてもOKなのでしょうか? 異体字との扱いだったのですから許容されるのかな?? (まあ1級で出題されることはないでしょうけど。2級以下での出題の場合は 【治癒】 でないとNGですね。)


【癒】  (1488/1505)
音 : ユ
訓 : い・える  い・やす
 準2級配当の常用漢字。 【治癒】 はともかく、 【癒合】 【癒着】 などが書き取りで出されたら迷わず書けるか、個人的にはちょっと心もとないです。


【皃】 と 【兒】

2015-08-14 10:47:20 | 雑記
 きょうは 【皃】 と 【兒】 のお話し。
 【容貌】 【相貌】 などと使われる 【貌(ボウ/かたち)】 の旁(つくり)を 【兒】 と書いてしまいそうになることが度々あるので、それぞれをまとめてみました。(かっこ内の数字は、「漢検 漢字辞典」初版/第二版の掲載ページです。また、「音」または「訓」に記したかっこ内の読みは、「辞典」初版になく、第二版にのみ掲載されている訓読みです。)


【皃】  漢検配当外  (1406/-)
音 : ボウ
訓 : かたち  かお
 なぜか「辞典」第二版には掲載がありません(初版にはあります)が、 【貌】 の異体字(同字)。「漢語林」「漢辞海」にもその旨の記載があります。異体字と言っても、こちらの字体がもともとなのでしょう。

【貌】  (1406/1420)
音 : ボウ
訓 : かたち(表外読み)
 常用漢字ですが、 【相貌】 の書き取りが 25-3 で出題されました。【双眸】【相貌】【怱(匆)忙】と、同音異義語が3つ問われた珍しい回でしたね。
 【貌(ぼう)には恭(きょう)を思う】 が「辞典」の見出しになっていますので、故事・成語問題として押さえておきたいところ。




【兒】  (628/633)
音 : ジ  ニ
訓 : こ
 【児】 の旧字体。以下に見るように、多くの漢字の音符として使用され、「ゲイ」という音を表していますが、常用漢字としての 【児】 には、「ゲイ」の音はありませんね。「漢語林」や「漢辞海」では、旧字体の 【兒】 には「ゲイ」の音も記載されています。

【倪】  (401/404)
音 : ゲイ
訓 :(きわ) (ながしめ)
 【端倪】 【旄倪】 【俾倪】 は必須の熟語でしょう。

【猊】  (401/404)
音 : ゲイ
訓 :(しし)
 【猊下(高僧の敬称)】 は覚えておきたい熟語。

【睨】  (401/404)
音 : ゲイ
訓 : にら・む (かたむ・く)
 【睥睨】は 16-3、20-1(いずれも語選択書き取り)、25-1(文章題・読み)で出題されている頻出語。書き取り問題では、上記の 【俾倪】 とどちらを書いてもOK。

【貎】  (401/404)
音 : ゲイ
訓 :(しし)
 「辞典」初版では 【猊】 の異体字の位置付けでしたが、第二版では独立した文字としての記載に変更になっています。かなり老眼が進んできた私には、小さいフォントだと、【貌(ボウ/かたち)】 との区別がつかないです。(苦笑)

【霓】  (401/405)
音 : ゲイ
訓 : にじ
 【霓裳羽衣】(16-1、18-1、25-2)、【雲霓】(21-3、24-1)、【虹霓】(19-3) と、頻出の漢字ですね。

【鯢】  (402/405)
音 : ゲイ
訓 : さんしょううお (めくじら)
 19-3 で、訓読み問題として出題。今に連なる「一文字で送り仮名のない訓読み」問題ですね。【鯨鯢】 を問われたら語順に注意。 【命を鯨鯢の腮(あぎと)に懸く】も、故事・諺問題として押さえておきたいところ。もちろん、「あぎと(腮/鰓/顋)」の方も。

【麑】  (402/405)
音 : ゲイ (ベイ)
訓 :(かのこ)
 「辞典」が第二版になって音読みが追加になった数少ない語の一つ。ただ、「ベイ」と読む用例の記載は、「辞典」「漢語林」「漢辞海」いずれにもなく、さらに「大漢和辞典」にもありませんでした。同じく「鹿の子」を意味し、「ベイ」と読む 【】 という漢字があり、「大漢和」の 【麑】 の項に 「に通ず」との記載がありますので、「ベイ」との音読みはこのあたりに所以がありそうです。ただまあ、漢検対策としてはこちらの音読みは覚える必要はなさそうですね。「辞典」には小さい字で 【麑裘(げいきゅう)】 が出ていますので、こちらが読めれば十分でしょう。意味は 「こじかの皮で作った白いかわごろも」(漢語林)とのこと。



 この記事を書くために改めていろいろと調べて、久しぶりに「調べる楽しさ」を味わいました。調べて発見して「へ~、そうなんだ~」と思えた瞬間が、やはり漢字学習の醍醐味ですね。^^


 

四文字以上の熟字訓

2015-08-09 16:03:27 | 熟字訓・当て字
 私のところは、昨日・今日は最近にしては涼しくて過ごしやすいです。と言っても十分すぎるほど暑いですけれど。(汗)

 さて、先般の 27-1 で四文字の熟字訓が出題されました。昨年度、語選択・書き取り問題で三文字熟語が3回続けて出題されていますが、今年度は四文字の熟字訓かも、ということで、「辞典」の索引に出ているものをまとめてみました。結構魅力的な熟語(「魅力的」の判断基準は自分でもわかりませんが)が多いように思います。

 27-2 対策としてどうぞ。



<問題>

1.  【八角金盤】 
2.  【麻葉繡毬】 
3.  【臭牡丹樹】 
4.  【蜘蛛抱蛋】 
5.  【海州常山】 

6.  【不知不識】 
7.  【没分暁漢】 
8.  【吉備奈仔】 
9.  【僂麻質斯】 
10.  【全手葉椎】 

11.  【側金盞花】 
12.  【天青地白】 
13.  【南五味子】 
14.  【水蠟樹蠟虫】 
15.  【灯台躑躅】 

16.  【加密爾列】 
17.  【熊啄木鳥】 
18.  【沃度丁幾】 
19.  【金瘡小草】 
20.  【瓶爾小草】 

21.  【王不留行】 
22.  【馬刀葉椎】 
23.  【荷包牡丹】 
24.  【蕎麦葉貝母】 
25.  【十大功労】 

26.  【紫羅欄花】 




<解答>
(かっこ内の数字は、「辞典」(初版/第二版)の掲載ページです。)

1. やつで (1237/1250)
2. こでまり (1421/1436)
3. くさぎ (683/689)
4. はらん (1027/1035)
5. くさぎ (174/176)

6. しらずしらず (1304/1317)
7. わからずや (1416/1430)
8. きびなご (291/294)
9. リューマチ (1601/1617)
10. まてばしい (906/914)

11. ふくじゅそう (953/961)
12. ちちこぐさ (1098/1108)
13. さねかずら (1178/1190)
14. いぼたろうむし (815/823)
15. どうだんつつじ (1127/1137)

16. カミルレ (136/138)
17. くまげら (1498/378)
18. ヨードチンキ (1522/1538)
19. きらんそう (354/356)
20. はなやすり (1303/1316)

21. どうかんそう (109/111)
22. まてばしい (129/1221)
23. けまんそう (148/151)
24. うばゆり (338/341)
25. ひいらぎなんてん (694/700)

26. あらせいとう (614/619)