漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0062

2019-12-31 19:43:36 | 古今和歌集

あだなりと なにこそたてれ さくらばな としにまれなる ひともまちけり

あだなりと 名にこそ立てれ 桜花 年にまれなる 人も待ちけり


よみ人知らず




 桜の花は、すぐに散ってしまうので薄情だと言われているけれども、その花でも一年に何度も来られないあなたが来るのを待っていたのですよ。

 滅多に訪れて来ない人が、桜のさかりの季節にやってきたことを、すぐに散ってしまう桜でさえ、あなたが来るのをまっていたのだと歌う。この桜は作者(女性でしょう)自身であり、世間から薄情者と噂されている私でも、あなたの来訪を待っていたのですよと、男の無沙汰を恨めしく非難する想い。
 次の 0063 (在原業平歌)がこの歌に対する「返歌」となっていますので、お楽しみに。


 さて、きょうは大晦日。あまりにも月並みですが、本当に一年はあっという間です。一日一首の古今和歌集も今日で62首。なんとか年内、続けてくることができました。読んでいただいた皆様に感謝します。

 来年もよろしくお願いいたします。


古今和歌集 0061

2019-12-30 19:40:27 | 古今和歌集

さくらばな はるくははれる としだにも ひとのこころに あかれやはせぬ

桜花 春くははれる 年だにも 人の心に あかれやはせぬ


伊勢






 桜花は、春がひと月多い年であっても、人々が十分に満ち足りるほどに咲くことはないのだろうか。

 旧暦では暦の調整のために閏月(うるうづき)が設けられ、そのために三月が2度ある年であることを材料に、短い期間で散ってしまう桜への名残惜しさを歌った機智。3月が2度あるのだから、その分桜も長く咲いていれば良いのにという想い。


古今和歌集 0060

2019-12-29 19:48:16 | 古今和歌集

みよしのの やまべにさける さくらばな ゆきかとのみぞ あやまたれける

み吉野の 山べに咲ける 桜花 雪かとのみぞ あやまたれける


紀友則






 吉野の山辺に咲く桜花を、雪と見間違えてしまったよ。

 吉野山は雪の多いところとしても知られており、そのため、山のほとりに咲く桜を雪かと見間違えたという歌。「だからなに?」という気もします(苦笑)が、当時の人々からすると、吉野の桜を見て雪かと思ったというのはいかにもありそうなこと、言わば「吉野山あるある」だったのでしょう。


古今和歌集 0059

2019-12-28 19:46:30 | 古今和歌集

さくらばな さきにけらしな あしひきの やまのかひより みゆるしらくも

桜花 咲きにけらしな あしひきの 山のかひより 見ゆる白雲


紀貫之






 山の谷間から白雲が見えている。どうやら山では桜が咲いたらしい。

 見立てと言ってよいのかどうかわかりませんが、山と山の間から見えている白雲から桜を連想し、桜の開花を推定している歌。最初に読んだときには、実際に咲いている桜を見てまるで白雲のようだと、逆に桜を白雲に見立てた歌かと思いましたが、桜花が「咲きにけらし」ですから、作者は桜を実際には見ておらず、咲いたのであろうと推測しているだけです。その推測の材料が白雲ということなのですが、まだまだ不勉強で今ひとつ良く理解できません。。。


古今和歌集 0058

2019-12-27 19:41:41 | 古今和歌集

たれしかも とめてをりつる はるがすみ たちかくすらむ やまのさくらを

誰しかも とめて折りつる 春霞 立ち隠すらむ 山の桜を


紀貫之






 一体誰がわざわざ探し求めて山の桜を折ったのだろうか。春霞が立って隠していたのに。

 山に咲く桜が折られていた。春霞が立って隠れていたであろう桜を、誰であるかはわからないがよくぞ見つけて折ったものだと感嘆する思い。正直なところあまりよくわからない感覚ですが、霞が立ちやすい地域で、それに隠れて桜がなかなか見えない山の風景なのでしょうか。