あだなりと なにこそたてれ さくらばな としにまれなる ひともまちけり
あだなりと 名にこそ立てれ 桜花 年にまれなる 人も待ちけり
よみ人知らず
桜の花は、すぐに散ってしまうので薄情だと言われているけれども、その花でも一年に何度も来られないあなたが来るのを待っていたのですよ。
滅多に訪れて来ない人が、桜のさかりの季節にやってきたことを、すぐに散ってしまう桜でさえ、あなたが来るのをまっていたのだと歌う。この桜は作者(女性でしょう)自身であり、世間から薄情者と噂されている私でも、あなたの来訪を待っていたのですよと、男の無沙汰を恨めしく非難する想い。
次の 0063 (在原業平歌)がこの歌に対する「返歌」となっていますので、お楽しみに。
さて、きょうは大晦日。あまりにも月並みですが、本当に一年はあっという間です。一日一首の古今和歌集も今日で62首。なんとか年内、続けてくることができました。読んでいただいた皆様に感謝します。
来年もよろしくお願いいたします。
さくらばな さきにけらしな あしひきの やまのかひより みゆるしらくも
桜花 咲きにけらしな あしひきの 山のかひより 見ゆる白雲
紀貫之
山の谷間から白雲が見えている。どうやら山では桜が咲いたらしい。
見立てと言ってよいのかどうかわかりませんが、山と山の間から見えている白雲から桜を連想し、桜の開花を推定している歌。最初に読んだときには、実際に咲いている桜を見てまるで白雲のようだと、逆に桜を白雲に見立てた歌かと思いましたが、桜花が「咲きにけらし」ですから、作者は桜を実際には見ておらず、咲いたのであろうと推測しているだけです。その推測の材料が白雲ということなのですが、まだまだ不勉強で今ひとつ良く理解できません。。。