うめのかの ふりおけるゆきに まがひせば たれかことごと わきてをらまし
梅の香の 降りおける雪に まがひせば 誰かことごと わきて折らまし
紀貫之
梅の香りが降る雪にまぎれてしまったならば、一体誰が雪と梅を区別して枝を折ることができようか。
さっと一読した際には、白梅が白雪にまぎれて見えなくなっている情景を思い浮かべましたが、改めて読むと紛れているのは梅の姿ではなく香り。姿が見えなくなっても香りでそれとわかる梅が、その香りまでも雪に閉じ込められてしまったということでしょうか。一つ前の 0335 が、雪で姿を見せられないならせめて香れと詠んでいるのに対して、その香りまでも、という自らの歌を配列した撰者紀貫之の趣向ですね。