負けんとき 上: ヴォーリズ満喜子の種まく日々 (新潮文庫) | |
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新潮社 |
ヴォーリズ建築のことを耳にする機会があるので、明治から昭和にかけて外国人の建築家が日本、それも関西に在住してバリバリ設計していたのだという認識しかなく、それでも、その程度の知識しかない私でもあれとあれとあれとあれもヴォーリスが設計したものか、というほどいまも関西にその足跡は残っているのです。
私が不勉強でもあったのですが、ヴォーリズその人が当時から全国的に活躍し、今も各地にその建築物が残り、また日本に来たのはキリスト教宣教師として、そして終戦時には日本国にとって非常に重要な役割(ヴォーリズ・ファイル)を果たしたことを知りました。
本書は彼が主人公ではなく、その妻となった元華族令嬢の生涯を描いています。
まだ、華族籍というのが存在し、おいそれとは平民になれなかった時代。
女性は家に付属するものであり、女性の参政権が認められる前の時代に華族の身でありながら官立の女学校で学び、やがてアメリカ留学をする満喜子。
満喜子自身は従前の家制度からの脱却が一筋縄には行かず、なかなか外に飛び出し自分の足で歩いていこうとはできずモヤモヤとした生活を長く送るのですが、この生活の支えとなり多大な影響を与えたのが大坂の女傑“広岡浅子”
この人の生涯だけで間違いなく一冊の本になるし、ドラマになる。
浅子は京都三井家から加賀屋・広岡家に嫁ぎ、女性実業家として活躍。また、女性の教育にも尽力し、日本ではじめての女性のための大学、日本女子大学の設立にも奔走(余談ですが、我が母校も一行だけ登場)。
このキャラがいいんですよ。私のイメージは藤山直美。快活で夫を支え、新しい事業にも挑み成功させる。でも、まだ女性に参政権はない。その教えを受けた中には村岡花子や市川房枝がいたそうです。
浅子は満喜子の背中を押し、アメリカ留学へと旅立たせます。
満喜子が何もできないと思い悩み、また踏み出すべきときに踏み出せないジレンマ、また幼馴染への思いと決別など、内面のドラマに富んだ一巻でした。
広岡浅子(wiki)についてはこちら。
さて、なんだか気になって調べたら広岡浅子が設立に加わっていた大同生命でこんな催しが。
大同生命保険本社ビルにて「大阪屈指の豪商『加島屋』からの400年の歩み~大同生命の源流とその発展の歴史をたどる」開催中
企画展「九転十起生-広岡浅子の生涯」
9/30まで。
■開館時間 10:00~16:00(水曜日は19:00まで)■休館日 土・日、祝祭日
行けない…。
はたまた、今年はヴォーリズ没後50年にあたるらしく…。
~没後50年記念企画展『ヴォーリズ・メモリアルin近江八幡』~
ヴォーリズが60年を過ごした街、近江八幡で ヴォーリズ建築を巡る記念企画展を10月4日~11月3日開催!
プログラム
玉岡かおるさんの講演会が10/12にありますねぇ。でも、この日は行けない、残念。