先週末の連休は、各地の山で遭難事故が多発したようです。中でも那須の朝日岳では、四人の人が亡くなるという大きな山岳遭難となりました。報道によれば、寒気を伴う強風と雨による低体温症が死亡原因という事です。
交通アクセスが良い事から日帰りでも容易に登れるので、那須の山々は人気が高く多くの登山者が訪れます。登山口の駐車場から峠の峰の茶屋避難小屋まで歩いて約1時間、そこから朝日岳までは約45分の道程で、天気が良ければ誰でも登れる山頂です。
峰の茶屋への登山道から見仰ぐ朝日岳(平成23年5月5日)
朝日岳山頂(同 上)
しかし風の強い山として知られ、特に西高東低の冬型の気圧になった時の風は凄まじいものがあります。今回もそれに類似した気象状況だったのでしょうか。
亡くなられたのはいずれも私と齢の近い中高年の方ばかり、あと数百m、あと数十分頑張って峰の茶屋の避難小屋までたどり着けば、尊い命が救われたのに残念な事です。
昭和55年11月8日に私が単独で那須岳登山を訪れた時も、そんな荒天の日でした。登山口のバス停から歩き始め、峰の茶屋が近づくにつれ吹雪混じりの強風が酷くなり、風に飛ばされた石のつぶてが身体にビシビシと当たり痛いのです。
そして風の強い時は前へ進めず耐風姿勢で耐え、弱くなった時に数歩前進する。この繰り返しで峰の茶屋の避難小屋まで何とか登ったものの、これ以上の登山は無理と諦め、板室温泉へと向かって下山した。
ところが峠の峰の茶屋から数百m降っただけで、先ほどの烈風が嘘のように収まったのです。僅かな地形の違いでこんなに風の勢いが違うのかと驚かされました。
板室温泉に下山途中、撮った唯一の写真
秋から冬に向っては日本列島へ寒気が侵入する都度に、山の天気は大荒れとなります。自然の猛威の前に、人間が太刀打ちできるものではありません。これからの季節、山がご機嫌(好天)な時だけ登らせて頂き、ご機嫌の悪い時には潔く諦める。そんな謙虚な気持ちが必要ですね。