Fさんの日々の記録と山歩き

 山歩きが生き甲斐の団塊世代オッサン、ある事無い事日々感ずるままに綴っていこうと思います。

垣内美雨さんの小説「避難所」を読んで

2019年07月01日 | 読書

 7月1日(月)

 このところ鬱陶しい梅雨空が続く。「土方殺すにゃ刃物は要らぬ。雨の三日も降ればよい。」何て諺を昔聞いた記憶があるが、そこまでいかなくてもアウトドア派のジーサンには退屈な日々だ。

 こんな日は読書に限る。一見知性とは無縁に見える私だが、実は若かりし頃の就職の履歴書に、趣味は読書と書いた程の本好きなんです。先日も図書館で垣内美雨さんの「避難所」という小説を借りて何気なく読んだのだが、これが中々興味深い内容で、ブログで少し紹介したくなった。

 この本は、8年前の東北大震災をモチーフに描かれた作品のようです。だんだん遠い出来事となりつつある東北大震災ですが、あの頃テレビや新聞はしきりに「絆」という言葉を連呼して、避難所での助け合いや親切など美談ばかりを報じていたような気がします。

 しかし小説の中で出てくる避難所には、それとは異なる負の側面が辛辣に描かれています。例えば「津波で夫を亡くした若妻を虐げる義父や義兄」、「義捐金をパチンコ等の遊興費で喰いつぶすロクデナシの夫」、「身勝手で出しゃばりな自称リーダー」、「必至に生きる母と幼子を陰で悪口を言いふらす隣人達」、こんな醜い人間模様が細かに書かれています。

 フィクションと判っていても読みながら腹立たしかったが、最終場面は困難に直面した女性達が助け合って東京で再起を図るというハッピーエンドだったので、気分よく読み終える事ができた。

 8年前マスコミが美談で報じた「避難所」よりも、この小説で描かれた露骨な人間関係が錯綜する「避難所」の方が、残念ながら真実に近いのではと思えてきます。

 出来事の一面だけを切り取って、「皆さんこれが真実ですよ。」と自分の意に沿った記事や映像を都合よく編集するのはマスコミの得意技だが、極限状態の修羅場では綺麗ごとでは済まされない醜い現実が潜んでいる事を、この小説が教えてくれているような気がします。

 作者の作者垣内美雨(カキヤミウ)さんは、これ以外にも高齢化や介護、結婚難などの社会問題を掘り下げた本を幾つも書かれているそうなので、他の作品も読んでみたくなりました。

コメント
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