「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「心子」という名前

2005年11月16日 20時51分05秒 | 「境界に生きた心子」

 「境界に生きた心子」の「心子(しんこ)」は仮名(かめい)ですが、実は実在の名前です。

 昔、ある老人ホームへ研修に行ったとき、同じく研修に来ていた介護学校の学生さんが「心子さん」といいました。
 とてもきれいな人でしたが、あまりにもいい名前なので、いつか自分の作品の登場人物に使わせてもらいたいと、長い間暖めていたのです。

 そして満を持して、僕にとって最も大切な作品の彼女に付けさせてもらうことができ、本当に良かったと思っています。

 ちなみに先日、高校の同級生がメールをくれました。
 話によると同じ高校の同級生の知り合いが、何と「心子さん」だというのです。
 その心子さんも若くして亡くなってしまったそうですが、広い日本にはやはりいるものなのですね。

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プロローグ(1)

2005年11月16日 09時25分16秒 | 「境界に生きた心子」

 <元気ですか? とても寒いね。
  暖めてほしい、あなたの心と体で……いつでも、どこにいても>
 <今電話したけどお留守でした。早く帰って。わがままでゴメンナサイ。
  そばにいてほしいの。逢いたいの。包んで欲しい>
心子(しんこ)からのメールだ。
 <マー君、マー君……辛い時いつもそう呼ぶの。マー君助けて!>

村瀬心子、三十五歳。彼女は身も心もその年齢とは無縁だ。優に十歳以上は若く見える。
 小柄でくりっとした目が愛くるしい。純情でセンチメンタルな童女の風情を漂わせる心子。
 電話で出しぬけにこんなことを言ったこともある。
「お願いがあります。一杯愛して。もうこれ以上いらないっていうくらい、一杯愛して」
 心子は限りなく満たされた、完璧な愛情を熱望している。

(続く)

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