「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

よい自分、 悪い自分、 そして本来の自分 (3)

2010年05月20日 20時34分13秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 しかし、 心子は 母親に対しては、  「悪い子の自分」 を 経験していました。

 心子は 僕に向かっても、 母親のことを ひどくけなしたりしていました。

 病気知らずだった母親は、

 幼い頃から 体の弱かった心子の 痛みを理解することができず、

 心子は 無神経な母親の所為で 傷を負っては、 うっぷんをぶつけたといいます。

 母親とは 人生観も感性も 全く異なり、 もめ事が絶えませんでした。

 心子は 愛してもらえなかった 母親を憎んでおり、 17才で家を出ました。

 このままでは 母親を殺してしまうと 思ったそうです。

 しかし実は、 心子と母親との関係は それ相応に良かったようです。

 心子と母親は 結構旅行にも行ったり、

 母親は 心子のマンションへ 頻繁にやってきて、

 家賃や食料を届けたり、 心子のベッドに 母娘で寝たりしていました。

 心子の中には、母親に対する 愛と憎悪が同居していたでしょう。

 心子は 僕の所へ、 母を口さがなく なじるメールを送ってきたりし、

 しかしその直後には、 それを悔いるメールを 送信してきました。

 愛され方を 知らずに育ち、 愛し方も 分からなかったのです。

 「よい子の自分」 と 「悪い子の自分」 が バランス悪く併存し、

 二分法的で極端に揺れて、 不安定になっていた状態です。

 残念ながら、 それを統合する道のりを 歩み始める前に、

 心子は 幕引きをしていってしまいました。
 
コメント
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