「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

ミュンヒハウゼン症候群と 刑事責任能力

2010年05月21日 17時20分15秒 | 凶悪犯罪と心の問題
 
 裁判員制度が始まり、 ちょうど今日で 1年目ということです。

 折しも、  「代理ミュンヒハウゼン症候群」 の 女性が起こした

 傷害致死事件の判決が、 昨日 京都地裁でありました。

 母親が 自分の娘3人の点滴に、 異物などを混入して 死傷させた事件です。

 「代理」 が付かない 「ミュンヒハウゼン症候群」 というのは、

 自分に関心を持ってもらうため、 自分自身を傷つけたり、

 病気を装ったりするものです。

 “ほら吹き男爵” の異名を持つ、 ドイツの実在の貴族・

 ミュンヒハウゼン男爵から 命名されました。

 ただし  「詐病」 とは異なり、 周囲の同情を得る 精神的利益が目的で、

 そのために 自傷や手術を受ける リスクも厭いません。

 詐病は 主に経済的利益のためであり、 大きなリスクは避けようとします。

 「代理(による)ミュンヒハウゼン症候群」 は、

 傷つける対象が 自分ではなく 別の人であり、

 被害者を献身的に看病をする 自分の姿に、 関心を集めたいためにするものです。

 多くの場合、 母親が子供を傷つけますが、 母親は子供を愛していて、

 懸命に子供に尽くすため、 周囲は傷害行為に なかなか気付かないといいます。

 母親の目的は あくまでも、 看病する自分が 注目されることであって、

 子供を傷つけることでは 全くありません。

 今回の事件でも 殺意はなく、 医学知識の不足のために、

 死にまで至らしめてしまった ということでしょう。

 昨日の判決では、 同症候群のために、

 刑事責任能力が一定程度 低下していることは認められましたが、

 弁護側が主張した 執行猶予は付きませんでした。

 「裁判員制度スタート以来、 最も難しい事件」 とも言われる この裁判ですが、

 裁判員に 難解な医学知識を 理解させると共に、

 心の障害を持った 被告の責任能力の判断は、 今後のことも含めて 大変な難題です。

(次の記事に続く)
 
コメント (2)
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