森田泰元 (たいげん) さんの
長男・ 泰州 (やすくに) ちゃん (当時9才) は、
やっちゃんと呼ばれていました。
星空の好きなやっちゃんを 誘拐・殺害したのは、
泰元さんの知り合い・ 津田暎 (あきら) でした。
遺体を遺棄した後、 身代金要求の 電話を重ねました。
ギャンブルで借金を背負った 短絡的犯行です。
泰元さん夫妻は、 法廷にもほとんど 足を運んでいません。
津田被告と 同じ空気を吸うことすら、 嫌だったといいます。
最高裁で死刑が確定し、
弁護士は再審を勧めましたが、 津田死刑囚は断りました。
「 遺族は 『あいつはまだ生きとるんか』 と 怒っとるじゃろう。
執行にならんと、 許してもらえんだろうな 」
拘置所では聖書を読み、 泰州ちゃんの命日には 冥福を祈りました。
「 『あいつを殺すのは惜しい』 と 言われるような人間になってから
執行されなければ、 泰州ちゃんの命との バランスが取れない。
心の豊かな 人間になりたい。」
死刑執行の時は 刑務官に礼を述べて 逝きましたが、
遺族に 謝罪の手紙を 書くことはありませんでした。
泰元さんは 死刑を当然と思っています。
悲しみに耐えることに 精一杯で、
それ以外なにも 感じることができませんでした。
年月を重ね、 悲しみがかさぶたのように 固まっていく気もしますが、
犯人を許せないという思いが 風化することはありません。
「 犯人は死刑になったら、 それで終わりかもしれない。
でも、 私たちは死ぬまで 事件を引きずって生きていく。
無期懲役にされたようなものです。」
〔読売新聞より〕
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