「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

淳一 錯乱 …… 「生死命の処方箋」 (56)

2010年12月17日 20時03分25秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/61379524.html からの続き)

○ 佐伯家・ 食卓 (朝)

  美和子が 朝食の用意をしている。

  淳一が入ってくる。

  全裸でサングラスをしている。

  視点が定まらず、 茫然としている。

美和子 「ジュン?  どうしたの、 その格好 

 …… !?」

淳一 「 …… ポチは …… ? どこ行ったの 

 …… ?」

美和子 「え、 なに言ってるの !?」

淳一 「 …… 探してもいないんだよ …… 

 (虚ろな目)」

美和子 「意識障害 …… !?」

淳一 「 …… どこに隠したんだよ …… ?」

美和子 「(淳一の肩をつかみ) ジュン !!

 しっかりして !!」

淳一 「 …… ポチ …… どこだ …… ?」

美和子 「ジュン !  分かる !?  ポチは死んじ

 ゃったじゃったのよ ! (淳一のサングラス

 を外す)」

淳一 「ああ …… ?」

美和子 「おいで ! (淳一の手をつかみ、 

 引っ張っていく)」

 

○ 同・ 庭

  美和子が淳一を ポチの墓に連れてくる。

美和子 「ジュン !  ポチのお墓よ !  分か

 る !?」

淳一 「あ、 ああ …… (少しずつ我に返る)」

美和子 「ジュン …… !!」

  淳一、 次第に自分に気づき、 ぶるぶる

  震えはじめる。

美和子 「大丈夫!?」

淳一 「 …… あああ …… !!」

  淳一、 家の中に 駆け込んでいく。

美和子 「ジュン !! (追いかける)」

 

○ 同・ 淳一の部屋の前

  淳一、 わめきながら走ってくる。

  光のついた 部屋の中に入り、 ドアを閉め

  る。

  美和子が追いかけてくる。

美和子 「ジュン !」

  美和子、 ノブを回すが 動かない。

美和子 「開けて ! (戸を叩く)」

  中から 淳一の叫び声と 激しい物音が聞こ

  えてくる。

美和子 「何してるの、 ジュン !?」

  淳一の叫び声。

  美和子、 向かいの 自分の部屋に飛んでい

  く。

  机の引出しから 淳一の部屋の鍵を 取り出

  し、 踵を返す。

  淳一の部屋の鍵を 開ける美和子。

美和子 「ジュン ! (ドアを開け 部屋の中に

 飛び込む)」

  淳一が 両膝を抱えこんで震えている。

  蛍光灯が割られ、 破片が飛び散っている。

美和子 「大丈夫 …… !? 」

淳一 「 …… ううう …… 」

美和子 「ジュン …… !! (淳一を強く抱きしめ

 る)」

  淳一、 視線が宙を漂い、 顎をガクガクと

  震わす。

美和子 「ジュン …… ! (思い切り抱きしめ

 る)」

(次の記事に続く)
 

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