昨年7月17日。参院選の投開票からちょうど1週間が過ぎた日の夜、佐藤恵理子(えりい)上尾市議会議員(36歳)が、突如NHK党からの離党を表明した。佐藤氏は「えびぴらふ」の名前でネットアイドルとして活躍し、グラビア写真集を出した過去も持つ異色の政治家だ。
NHK党党首である立花孝志氏は即座に、 〈佐藤えりい上尾市議 が他党に移籍して次の上尾市議会議員選挙を戦うのであれば、これまでの佐藤市議の事を私のYouTubeで全部暴露します。私は裏切り者の公人に対しては厳しいですよ。〉(立花氏のツイッターより) と脅しとも取れるツイートを公開し、去り行く元同志に怒りを滲ませた。
参院選比例代表では、ガーシー(東谷義和)氏を擁立し当選させたNHK党だが、そのガーシー氏はいまだ一度も登院せず、滞在先のドバイで独自のSNS活動を継続中。今年に入り、複数の著名人らが脅迫や名誉毀損容疑の告訴状を警視庁に提出し、警視庁がガーシー氏の関係先を捜索していたことが明らかになるなど、話題に事欠かないNHK党だが、昨今、党員の離党が相次いでいる。立花氏、そしてNHK党は一体どこに向かおうとしているのか――。 無所属となった佐藤市議に、離党の真相や立花氏のこと、今後の活動など、赤裸々に語ってもらった。 (取材・文 今川芳郎)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4b049a4c6b44f90b27325de7722cb6c875c2e693?page=1
https://gendai.media/articles/-/105657
唐突な地方切り捨て
――佐藤さんは、離党を発表した直後にご自身のツイッターで「頻繁な党名の変更」「度重なる方向転換」「同姓同名作戦(註:昨年の参院選比例代表で、れいわ新選組代表の山本太郎氏と同姓同名の候補者をNHK党が擁立したこと)」「詐欺をしている人(註:昨年の参院選にてNHK党が擁立したガーシー氏を指す)を応援したくなかった」など、離党に至った理由をいくつか挙げてましたが、何が決定打になったのでしょう。離党を考え始めたのは、いつごろですか?
――佐藤さんは、離党を発表した直後にご自身のツイッターで「頻繁な党名の変更」「度重なる方向転換」「同姓同名作戦(註:昨年の参院選比例代表で、れいわ新選組代表の山本太郎氏と同姓同名の候補者をNHK党が擁立したこと)」「詐欺をしている人(註:昨年の参院選にてNHK党が擁立したガーシー氏を指す)を応援したくなかった」など、離党に至った理由をいくつか挙げてましたが、何が決定打になったのでしょう。離党を考え始めたのは、いつごろですか?
佐藤恵理子(以下、佐藤) 実は、離党する半年以上前から考えていたことだったんです。 NHK党の場合、立花党首がYouTube上でメッセージを発信することによって、党員に対して業務連絡するケースが多いのですが。2021年秋、そのYouTubeを通じて「現職の議員は全員辞職して、来年の参院選に出る」よう、言われました。突然の出来事に、空いた口が塞がりませんでしたよ。「えっ、どういうこと?」って。
――それは、どういう方針なのでしょう?
佐藤 つまるところ、私たちは参院選でNHK党として票を獲得するためだけに、当選する見込みもないままに選挙に駆り出されるということです。そのために、議員辞職しろと。 昨年、ガーシー氏が比例代表から出馬して当選しましたけど、これは極めて異例のこと。色んな自治体で現職議員を務めている私たち党員からすると、かなり大きな賭けというか、ほぼ負けが決まっている戦いなんです。各党員は、それぞれの議会で課題に取り組んでいるわけですので、「ちょっとどうなのかな?」と。結果的に、私はこの要請を拒んで上尾市議会議員を続けたわけですが、立花党首の運営方針に強い不信感を覚えました。
NHK党の運営方針にうんざり
佐藤 ええ。昨年の参院選でも、NHK党は多くの候補者を擁立しましたが、一言で言えば、政党交付金目当てなんです。 交付の対象となるのは、「国会議員を有し、かつ、前回の衆議院議員総選挙の小選挙区選挙若しくは比例代表選挙又は前回若しくは前々回の参議院議員通常選挙の選挙区選挙若しくは比例代表選挙で得票率が2%以上の政治団体」と決まってまして、その政党が擁する国会議員の人数、衆院選・参院選での得票数によって金額が決まることになっている。当選しなくても、票が集まれば集まるほど、交付金が入る仕組みになってまして、その仕組みを狙っているのです。 もちろん、党の運営にお金が必要になることは理解できますが、交付金をかき集めるために、現役議員に辞職させてまで候補者を乱立するというのはちょっとどうなのかなと……。
――なるほど。その甲斐あってと言いますか、今年NHK党に交付される政党交付金は3億3400万円に上ると、1月に発表されました。昨年1年間のNHK党への交付額は2億4200万円ですから、9000万円近く増える見通しになっています。
佐藤 ええ。それ以前の衆院選の時にも、「諸派党構想」と言って、交付金を得るために思想は関係なく、とりあえず候補者を乱立させた過去がありました。その際に、獲得できた助成金の額に応じて、寄付という形で候補者にバックが入ることを謳っていた。つまり、「儲かるから、うち(NHK党)から出てくれ」と。NHKの被害者たちを守るという党の活動にも、お金が必要になりますから、ある部分では納得していたのですが、次第に「選挙ビジネス」的な立花党首のやり方に違和感を覚えるようになりました。 餃子屋を経営してNHK党の党員に働いてもらうと言い出したり、党名を頻繁に変えたり。党首の言うことがコロコロ変わりますし、やることに一貫性がないなと徐々に感じるようになりました。そうしたことが積み重なって、昨年の参院選で「もう付いていけないな」と限界を迎えた。
後編【「ガーシーは論外」…NHK党を離党したアイドル議員が、今だから話す「NHK党の離党者続出」の真相】に続きます。