参議院は「良識の府」なのか?
[HRPニュースファイル562]
本年は全国各地で地方選や知事選、そして夏の参院選挙があるため、「選挙イヤー」と言っても過言ではありません。
昨年の12月に衆院選が行われたばかりですが、朝の駅頭では多くの候補予定者が演説の順番を競っています。私の地元の静岡でも、来月には市議会選挙が行われますし、静岡県知事選は参院選と同時に開催される見込みです。
◇衆議院と違いがなくなってきた参議院
さて、今回は7月に予定されている参院選挙に合わせて、そもそも論に触れてみたいと思います。
参議院は、衆議院とともに国会を構成する一院です(日本国憲法第42条)。議員定数は、公職選挙法第4条第2項に明記されているように242名です。3年ごとに半数ずつ改選されるため、今年の参院選挙が終われば、次は2016年にやってきます(つまり、2010年参院選の改選)。
衆議院は満期4年に対し任期は6年と長く、衆院と違って解散がありません。そのため、まず、メディアなどで参議院を紹介するときに最もよく目にするのが、参議院は「良識の府」だという意見です。
そもそも参議院は、政党にとらわれない作家や学者などの有識者を中心とする大きい会派があり、自由な議論をすることが最大の特徴でした。衆議院で審議された法案を専門性の高い参議院でも審議し、衆議院の行き過ぎを抑える機能を持つとされます。また、衆議院で通過した法案を、参議院で修正・否決された法案が再び衆議院で否決となる事例も過去にはありました。
また、法案案・予算・条約・内閣総理大臣の使命に関しては衆議院の優越がありますが、決して無視できない一院だという認識が永田町にはあります。その証拠に、佐藤栄作元首相は「参議院を制する者は政界を制する」という言葉を残しています。
ただし、ここまでの文章に過去形が多かったことからもお分かりの通り、現在の参議院が上記の通り「良識の府」だとは言いかねる現状があります。
参議院選挙に比例区を導入したあたりから政党の色が強くなってきたという意見もある通り、衆議院との違いがなくなりつつあるからです。また、各党は議席を獲得するためにスポーツ選手や芸能人などのタレントを擁立する傾向が強くなりがちです(もちろん、そうした方々にも、後に立派な国会議員になっているケースはある)。
しかしながら、6年間の任期の間には常設の内閣委員会や外交防衛委員会、財政金融委員会などに所属することや国会での法案に関する審議を経験するわけです(その他には参議院特別委員会や調査会などが存在する)。言い換えれば、参議院では衆議院以上に専門的に濃密な議論をするのが本来の使命です。たとえ当選時には知らないことが多くとも、6年間でしっかりと勉強をして国政を担うことが最低限の義務であります。単なる数合わせのために参議院選挙を行うのではなく、やはり政策志向で議員を選ぶことが大事です。
その意味では、「マニフェスト選挙」は参議院には向いています。ただ、マニフェストを読んで投票する方の比率はまだまだ低いのが現状のようですが(注)、「良識の府」を本気で復活させるならば、参議院議員は政策で選ぶべきでしょう。
(注)心理学の世界では有名なメラビアンの法則を政治や選挙に応用すると、有権者が投票を決める基準は、55%が見た目(服装や髪型、姿勢など)、声のトーンが38%と続き、政策や内容は7%とされている。政策の中身の関心は薄いようだ。
◇立法の非効率が目立つなら参院廃止もあり
幸福実現党は、2010年の参院選挙から上記の政策提言を主張していますが、現時点では参議院廃止は現職議員の強い反対によって進まないと予想されます。
ただし、参議院と衆議院の違いがなくなり、「良識の府」としての存在意義がなくなっていること。立法過程の二重化、ねじれ国会等による国政の遅延化が改善されない以上は、参議院廃止論は当然出てきてしかるべきです。なぜなら、国政における意思決定の迅速化と国費の節減にもつながるからです。
今後は、迫り来る国防の危機に対処するためには、憲法や自衛隊法などの関連法案の改正も必至となります。その時に衆参で迅速に対応できる国会でなければなりません。言い換えれば、首相の強いリーダーシップと迅速な判断が求められる機会が増えるということです。
例えば、尖閣諸島問題、朝鮮半島有事、北方領土関連のトラブル等はもちろん、テロや邦人人質事件などにも対処する必要があります。 もう「決められない政治」では済まされませんし、衆参で審議を二重に行っている暇さえないことも考慮に入れるべき です。
今回の参院選では争点にはならないかもしれませんが、少なくとも「良識の府」としての参議院の復活は考慮するべきだと考えます。 (文責:中野雄太)
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