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胡 錦濤前指導部で軍制服組のトップを務めた、郭伯雄・前中央軍事委員会副主席(72)が身柄を拘束され、汚職の疑いで取り調べを受けていることを、16日付 産経新聞が報じた。郭氏と同時期に共に軍制服組のトップを務めた徐才厚・前中央軍事委副主席も今年1月、汚職で立件され、3月に亡くなっている。
中国では伝統的に、中国共産党のトップである総書記であろうと、国家のトップである国家主席であろうと、人民解放軍の軍権を掌握しなければ実質的な国の最高指導者とは言えない。郭・徐両氏は、胡錦濤・前国家主席時代の軍トップだが、実は、その前の江沢民・元国家主席の側近でもあった。
つまり、江沢民、胡錦濤という前任者と近い関係の元制服組トップ2人を失脚させたことは、習近平・国家主席が着々と解放軍を掌握しつつあることをうかがわせる。
ただ、最近の中国の状況を重ねると、また別の視点を得ることができる。
15日に発表された中国の今年1~3月の国内総生産(GDP)の実質成長率は前年比7.0%増で、6年ぶりの低水準。中国経済の減速ぶりが鮮明になった。最大 の原因は、昨夏から続く不動産市場の低迷だ。住宅価格の値下げが続く中、1~3月の住宅販売額は前年同期比で9.1%減となり、投資の低迷が他の産業の生産や輸出、個人消費にも影響を与えているようだ。
一方で、中国は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を主導。創立メンバーは57 カ国となった。だが、一党独裁の中国主導である限り、中国にすり寄る国や地域に有利な投資が行われたり、資金を使って投資対象国を操ったりすることは火を見るより明らかだ。東シナ海や南シナ海では、領土紛争が続いているが、こうした問題にも口出しさせないよう、政治的な動きにも利用するだろう。
AIIBの実態は、中国の覇権拡大の金融版と見るべきだが、かげりを見せている中国経済の実状を考えれば、中国経済が崩壊したときに、参加国は一蓮托生となる危険性もある。
習近平氏は、国内においては「腐敗撲滅」を掲げて高官らの悪事を暴き、国民のガス抜きをしながら政敵を粛清。対外的にはカネの力を生かして、中国と切っても切れない関係をつくろうとしているように見える。
AIIB 参加国は「中国マネー」に引き寄せられているが、その中国は膨大な国家予算で軍拡を進めたり、チベットやウイグルにおいて人権弾圧や虐殺を行ったり、自国民への思想・言論統制などの「恐怖政治」を行っている。国際社会は、そうした国が持つカネの力をありがたがっていては、真の平和や繁栄が訪れることはないということを確認すべきである。(泉)
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