もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

イギリス原発計画からの日立撤退を学ぶ

2018年12月18日 | 欧州

 イギリスの原発建設計画から日立製作所が撤退を検討していることが報じられた。

 撤退の理由は、採算が取れないことであるらしいと報道されているが「建設業者が採算を執れない?」ということが理解できないので、イギリスの電力事情を勉強する気になった。しかしながら、ネット上の情報を拾い読みする程度ではとても理解できないものであったが、かって電力自由化の先進国として脚光を浴びたイギリスの電力事情は相当に酷いことであるらしいことだけは理解できた。イギリスの電力自由化は、1989年に国営の中央電力公社を発電3社、配電会社12社、送電部門1社に分割民営化されたが、紆余曲折の末に、現在はビッグ6と呼ばれる6つの電力会社で小売市場の約9割、発電市場の約7割を占めているようである。ビッグ6の内訳はイギリス系2社、ドイツ系2社、フランス系1社、スペイン系1社となっており、経済や国民生活の基幹である電力事業を外国資本に委ねていることも不思議である。原発に戻ると、現在15基の原発が稼働しているが、いずれも1970年代以降2000年以前に臨界に達したもので、老朽化が激しいようである。電力自由化と時を同じくして脱原発・自然エネルギーや天然ガス火力発電にシフトすることを計画したが、電力需要の急増、北海ガス田の枯渇、電力買い取り制度の崩壊から2015年以降に新しい原発の建設に踏み切ったものである。現在5基の建設計画が進行中であるがドイツ、フランス、スペインの企業が撤退、日本も東芝と日立が撤退を検討中とされている。唯一計画が順調とされているのは中国系企業のみであるが、それすらも制御システムにファーウェイ社の機器を使用できないことにでもなれば、計画が頓挫することも十分に考えられる。日本の場合は、電力会社やJパワーが建設し以後の運転・管理は電力会社が行うために、完工以後に建設業者が電力事業の採算に関わることはないが、イギリスの場合は建設業者を含む企業体が完工以後の発電~売電の一切に関わるようであり、電力料金や自然エネルギー発電の買取料金から考えて採算が取れないとする外国企業の撤退が相次いでいるように思われる。さらに、日立の撤退は、福島原発事故以来、安全基準が見直された結果、建設費が当初の1.5倍に高騰したことも原因とされている。以上の点から、重要な社会インフラを民営化して、少なからぬ部分を外国資本に依存しているイギリスの現状を見る限りは、電力の完全自由化は熟慮すべき政策ではないだろうか。

 水道法の改正に伴って、水道事業の経営に対する民間企業の参画度合いが拡大されることとなった。時を同じくして岩手県の1地域で水道事業を委託されていた会社が、電気代金を住民に請求する事案が起きた。当該企業は電気代を住民が払わなければ水道を止めるとしているが、このような問題は水道法の改正に伴って全国的に拡大することも予想される。”規制緩和””公営事業を民営にして民間活力を導入”というお題目は耳に心地よいが、社会インフラを民営化することには多くのリスクが伴うことを覚悟しなければならないのではないだろうか。