もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ハンガリーの奴隷法と行政裁判所設置に学ぶ

2018年12月22日 | 社会・政治問題

 ハンガリーでの改正労働法が奴隷法と非難される現状と行政に関する訴訟を担当する行政裁判所が設けられたとの記事を読んだ。

 労働法の改正については、国内産業の人手不足を解消するために年間250時間とされていた残業時間の上限を400時間に緩和し、更には企業が支払うべき残業手当の支払いも最大で3年間猶予できるもので、世論が『奴隷法』と呼ぶのも納得できるものかとも思うとともに、日本の働き方改革など桃源郷におけるイザコザとも思われる。労働法の改正に合わせて設立された行政裁判所は、これまでの司法制度とは別の特別裁判所であるらしく、行政の黒を白とするための機関ではなかろうかと邪推するものである。連続3期(通算4期)して2010年以降政権の座にあるオルバン首相は一貫して移民排斥やメディア規制を推進してEUから制裁をちらつかされている存在であるらしい。民主主義の3権機能のうち最も独立した性格を保持できなければ人権や社会正義が保たれず、司法制度を超えた特別裁判所設立とは独裁体制への足掛かりかと思ったので、各国の司法制度を拾い読みした。しかしながら各国の司法制度は極めて複雑・難解で、罪状や量刑によって1審の担任裁判所が異なることなどざらで、おそらく助言者なくしては訴状の提出先すら分からないのではなかろうかと思えるほどである。また行政裁判所についても欧州各国に置かれており、ウィキペディアによると欧州を中心とした大陸法体系下では当然のことであるらしい。日本の場合、ドイツのワイマール憲法を下敷きとした帝国憲法では行政裁判所を含む特別裁判所が存在したが、新憲法では弾劾裁判所を除いて設置が禁止されており、唯一特別裁判所に近い知的財産高等裁判所も東京高裁の支部として司法制度の範囲に置かれている。また、行政裁判所を含む特別裁判所の多くが、1審を以て最終審とすることが一般的であり、殆どの裁判に3審制度を保証しているのは日本くらいではなかろうかと思うものである。日本の裁判が長すぎる根本はこのことに起因するのかも知れない。ハンガリーに開設される行政裁判所が他のEU諸国のものと違うものか否かは知る由もないが、今後も注視したいと思うものである。

 3権のうち、司法を凌駕する規範が存在する国家が、独裁や迷走に走る例は無数にある。過去にはナチスが人種を、現在も中国では共産党が、イスラム国家ではコーランが、、韓国では反日が、それぞれ司法を超える規範として存在している。ここまで書いて、アメリカが原爆使用に躊躇しなかった背景には、ソドムの街を焼くことが善人救済の路とする唯一神の規範が作用していたのかも知れないと思い至ったが、・・・。