韓国海軍駆逐艦が自衛隊の哨戒機に対して射撃用レーダを照射した。
照射は2回、10数分間とされているが、韓国は臆面もなく北朝鮮の遭難漁船の捜索のため使用したものであり自衛隊機に対して照射したものではないと釈明している。射撃レーダはビーム幅が狭く極めて指向性が高いもので、海面の広範囲な捜索に活用できないことは常識であり、万が一海面に向けて照射していたならば航空機が感知できないものである。国際的な常識としては、射撃レーダの照射を受けた航空機や艦艇は被攻撃の前兆と捉え、国際法的に容認される自衛のための対応行動(反撃のための先制攻撃)を採ることとなるが、自衛隊機は退避行動を採るとともに韓国軍の真意を質すに留まったとされている。偶発衝突の危険性は1機長の良識と自制によって回避されたに過ぎない。東西冷戦時には相手のレーダ波感知能力や対応速度を図るために米ソ相互が行っていた時期があるが、偶発的な衝突が戦争にまで拡大するという危険性から、条約にまで至らないものの軍の合意事項として射撃レーダの照射は行わない慣行が定着して、現在では先進国間で軍人のチキンゲームとして行われることはない。近年では中国フリゲート艦が自衛艦に照射した例では後に照射は中国共産党の指示であったことが明らかになっているように、政府のトップ若しくは極めて高いレベルが関与しなければ起こり得ない事案である。韓国が照射があったことを認める一方で、照射が軍人の独走や過誤でないと主張することは、政府中枢の確信犯的な行為の裏返しに過ぎないと考えざるを得ない。政府は外務次官級の会談の場で抗議するとしているが、銃口を向けたに等しい行為に対しては如何にも弱腰であると思う。総理若しくは防衛大臣が、再発の場合には対応を躊躇しないと明らかにすべきであると思う。
今回の事案に対してネットの反応を探ってみたが、照射の不当を訴えるものが多数である一方で、韓国発表の理由ならば仕方がない又は静観すべきとする意見も散見された。このことは政府の発表に制服の自衛官が同席していないことが大きいのではないだろうか。射撃用レーダとは何なのか、照射が意味するものは何なのか、どのような対応手段があるのか、等を報道陣や国民にレクチャーすべきであると思う。官房長官や防衛大臣の「遺憾・懸念・抗議」では、国民の危機感は喚起することはできないと思う。韓国の文大統領の支持率が不支持率を下回ったことが報じられた矢先の出来事であれば、致命的な反撃が無い日本相手のチキンゲームによって、レイム・ダック状態からの起死回生を図った可能性も捨てきれないと考えられるのだが。