もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

「いずも型」護衛艦の空母改修を考える

2018年12月21日 | 自衛隊

 防衛計画の大綱改定により次期中防で「いずも型」護衛艦をF35B運用可能な空母に改造することが閣議決定された。

 空母と聞けば、アメリカの攻撃空母が連想されるが、いずも型護衛艦は2万トンの船体であることから、平甲板の飛行甲板から航空機をカタパルトで射出する本格的な空母ではなく、スキージャンプ空母と呼称される形式の空母になると思われる。当然のことながら運用できる航空機は単距離離陸垂直着陸(STOVL)機に限定されるので、軽空母に分類されるものと思う。一般的に自衛隊の艦船は、政治的配慮や予算執行の制約から将来の改造を考慮した余裕が与えられていないという致命的な欠点を有しているとされている。今回の空母への改造についても、船殻の余積、間仕切り、甲板強度、昇降装置、燃料タンク、給油装置、主機出力、発電能力等々、クリアすべき点は多いが、いずも型においては計画時の国際情勢から考えて、既に多くの問題が解決可能な状態で建造されていると思いたいものである。更に考えなければならないのは、軽空母の運用に不可欠な補給艦の改造であると思う。現在の補給艦は護衛艦隊の滞洋能力延伸のために整備されたもので、補給用燃料(貨油)保有量や移送手段としては艦艇の主燃料である軽油に重点を置いており、航空燃料の補給能力は脆弱であると思う。いずも型の限られた船体を考えれば、航空燃料用タンク容量を増やす手段としては艦の航続距離と滞洋期間を犠牲にして艦艇主燃料用の軽油タンクを振り分けるしかないので、補給艦の必要性はますます重要となってくる。さらには航空機部品と航空機用弾薬のために艦の倉庫と弾薬庫を割愛せざるを得ないことから起きる個艦の継戦能力の低下を補完するためにも補給艦の存在意義を忘れることはできないと思う。海上自衛隊がF35Bを独自に運用できる能力を持たないために、艦載機として空自機を使用せざるを得ない現状から派生する多くの問題点があると思うが、島嶼防衛等に対して機動力を発揮するであろう「いずも型護衛艦」の空母改造を成功させて欲しいものである。

 野党は、今回の改造に対して早くも専守防衛の範囲を逸脱するものとしているが、そもそも専守防衛の範囲に限定される武器・装備という括りが理解できない。1丁の狙撃従と1発の弾丸でも使用法によっては侵略武器となる。極論すれば、世界貿易センタービルに突入した民間機は侵略武器だろうか。防衛や侵略の定義は武器の優劣に因るものではなく、武力発揮の方向で定義されるべきものと考える。中国と軍拡を競う愚は理解できるし、軍備の上限を模索するのが政治であり、、軍政がシビリアンコントロール下に置かれることは当然のこととして、起こり得る危機に対して制服が力を発揮できる装備を与えるのもシビリアンコントロールの責任であると思うのだが。シビリアンコントロールに1家言をお持ちの小西議員や如何に。