ベネズエラの混迷が度を増して、解決の糸口が見えない状態である。
昨年5月に選挙で選ばれたマドゥロ大統領、暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長がそれぞれ正当性を主張し、マドゥロ氏側は中露、グアイド氏側は米欧がそれぞれ承認を表明して、既に東西の代理戦争の様相を呈している。混乱の原因は経済不安で、昨年のインフレ率は100万~1000万%とされ、既に300万人以上が国外に出たともされている。自分の懐勘定で言えば、1000万%のインフレ下においては年間でチョコボール1個も買えないことになるという想像すらできないものである。ベネズエラは産油量で世界12位、原油埋蔵量については世界第1位とされており、正常な国家運営が為されて居れば裕福な世界を建設することも可能であったと思う。経済不安の原因は、貧困層の救済を旗印にしたチャベス元大統領の急進的社会主義革命の結果であるとするのが一般的である。ベネズエラ貧困の原因は途上国特有の「富が何処かに消えている」状態であるとしたチャベス氏が、オイルマネーを独占するアメリカ資本の石油公社を国有化して貧困層の教育・医療を無償化したことに端を発している。しかしながら、ベネズエラ原油の質が悪いことに加えて国際的な原油価格の長期低迷によって、オイルマネーという原資を失ったチャベス大統領の経済・福祉改革はバラマキ政治と批判されるようになる。それでも貧困層救済を旗印に掲げるチャベス大統領は国民や出身の軍部からカリスマ的な支持を受けていたが、彼の死去に伴って混乱は加速度的に進行している現状と理解している。アメリカは軍事オプションさえ躊躇しないと公言、中露はチャベス政権下への投資や債務が無になることを恐れるとともに、アメリカの裏庭に築いた橋頭堡を失いかねないためにアメリカの介入に反発を強めており、大国の思惑によっては内戦~代理戦争という途上国で良く見られる図式を辿る危険性もあると考えている。
資本主義社会では、社会主義の政治家や活動家は「積極的に政権を取りに行くべき」という考え方と「現状の世界経済のシステムでは政権を取ってもオプションは限られているので、政権外部の批判勢力にとどまるべきだ」という2つの考え方があるとされる。共産主義の思想と軍事力でキューバや東欧を衛星国としたものの破綻したソ連の衣鉢を継ぐロシア、経済力で途上国の属邦化・植民地化を目指す中国。黄色いベスト運動に揺れるフランス式社会主義。旧民主党政権で空白の3年間を経験した日本。ベネズエラの現状と将来を見る傍らで注目しなければならないことではないだろうか。