トランプ大統領が先進7か国(G7)首脳会議(サミット)拡大という観測気球を打ち上げた。
次回のサミットは9月にキャンプデービットで開催予定であるが、その際ロシア・オーストラリア・インド・韓国を加えようという構想である。云うまでもなく4か国は、地勢的には中国の覇権構想と隣接しているために、4か国の追加はあからさまな中国牽制で従来のサミットを「反中国トラスト」に変えようとする構想に他ならない。中国擁護を鮮明にしているロシアは置くとして、インドは4月以降カシミールの国境問題が再燃し、オーストラリアは南太平洋における中国の債務外交に直面しているのみならず在豪華僑に依る政界工作に脅かされ、韓国は米中を天秤にかけた二股外交で西側社会から疑惑の目を向けられている。サミットの歴史を眺めると、冷戦下の1973年のオイルショックに対応するために西側4か国(日・米・英・仏)の財務大臣級が米国で会合を持ったことに始まるとされる。1975年に西独を加えた「工業化された5つの主要民主主義国の首脳」が、主催国を交代しつつ年に一回会議を持つことになり、「G5サミット」が開催されたが、これを不服としたイタリアが押しかけ女房的に第1回会議に乗り込んで来たことによってイタリアを加えG6となった。1976年にカナダを加えて「G7」となる。冷戦終結後の1991年にソ連(ロシア)が段階的にサミットの枠内に参加するようになり、1998年以降は「G8サミット」となったが2014年のクリミア半島併合を受けてロシアは除外されて、現在の「G7サミット」体制に戻っている。経済規模で劣り自由主義社会とは看做されないソ連(ロシア)がメンバーに加わったのは、クリントン大統領のロシア・ソフトランディング構想のためとされているが、中国を加えようとする動きは無い。それは、「G7は自由、民主主義、法の支配、人権と言った基本的な価値観を共有する主要国の枠組み」とする認識が共有されているためであり、経済活動の枠組みであるG20とは一線を画しているとされている。
トランプ大統領の観測気球は、他の参加国首脳に打診したものでは無く、打診しても同意は得られないとする見方が一般的であるが、トランプ大統領にとっては、中国に対するアメリカの姿勢を示すことで十分なのだろう。また、ロシアを中国から離反させ・インドとオーストラリアの反中姿勢を恒久化し・米中二股外交で腰の定まらない韓国に対する踏み絵の意味を込めているのかも知れない。サミットには議長国が参加国以外の国を招待することも慣例的にあることから、正式に招待された場合の各国の動向には興味津々である。