アメリカの黒人男性死亡に対する抗議デモの余波で、銅像の受難が報じられている。
報じられているのは、アメリカ大陸発見のコロンブス像(米・バージニア州)、南軍司令官のリー将軍像(米・バージニア州)、奴隷商人コルストン像(英・ブリストル)、コンゴの苛斂誅求で元国王のレオポルド2世像(ベルギー・アントワープ)と目白押しの感がある。いずれも、直接・間接を問わずに黒人差別の根柢に深く関わったとの理由によるものであるが、報じられてないマイナーな像もあると思うので多くの像が撤去・破壊の危機に立たされているのではないだろうか。権力に阿るためであろうか存命中に立てられたものを除いて、銅像(木・石像を含む)は生前の功績や遺徳を顕彰するために建立されるのであろうが、ソ連邦解体時のレーニン像やイラク戦争時のフセイン像のように、憎悪の対象とされたものも少なくないようである。また、歩きスマホを助長するという陳腐な理由から撤去・変質された二宮金次郎(尊徳)像の例もあるし、前述のコロンブス像を黒人差別の象徴として攻撃するのは、些か牽強付会とも感じられる。このように、銅像は長い時間に亘って民衆の毀誉褒貶に曝される運命をも担っていると感じられる。日本にどれほどの銅像があるのだろうかと検索したが、残念ながら見つけられなかった。知り得たところでは東京都だけでも100体以上もあり、屋内に置かれた創業者の像などを含めれば数え切れない数の銅像が、後世の審判を待っているようである。銅像を壊すのは簡単であるが、遺体そのものが保存されているとそうはいかないもののようで現在、遺体保存されているのは、レーニン、スターリン、毛沢東、ホー・チ・ミン、金日成、金正日、ゲオルギ・ディミトロフ(ブルガリア共産党の指導者)、クレメント・ゴットワルト(旧チェコスロバキアの大統領)、アゴスティーニョ・ネト(アンゴラの大統領)、フォーブス・バーナム(ガイアナの首相)の10遺体とされている。レーニンの例を見ると、ソ連崩壊後に荼毘に付して埋葬しようという計画もあったが、死者に刑罰を科すことや遺体損壊の忌避感から今もって保存されているようである。清朝以前の中国や李朝以前の朝鮮では重罪犯(主として反乱)に対しては、墓に葬られた死体を掘り起こして切り刻む凌遅刑(りょうちけい)と呼ばれる刑罰があったことを考えれば、現在保存されている遺体の処理に先鞭をつけるのは、体制崩壊後の中国・北朝鮮であるかも知れない。
ノンポリの自分としては、建立後100年以上も経過した銅像は歴史の一場面のみを示すモニュメントであり、像となった人の功績を議論することはあっても、いまさら像そのものまでも攻撃することは無いだろうと考えるが、”坊主難けりゃ”の行動であろうか。と、何やら訳知り顔をしているが、慰安婦像とそれを信仰することには大きな嫌悪を感じることを思えば、銅像を破壊することは今後とも起こり得るのだろう。