もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

専門家会議の反省

2020年06月28日 | コロナ

 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下「専門家会議」)の改組が報じられた。

 専門家会議は、2020年2月に中国コロナ対策について医学的な見地から助言等を行うために新型コロナウイルス感染症対策本部の下に設置されたものであるが、6月24日に「新型コロナウイルス感染症対策分科会」として改組された。改組に対して識者の一部には、政治家の独断であり専門家の意見を封じるものとする意見が多いようであるが、専門家会議の座長が「我々も前のめりになり過ぎた」と述べているのが真相であるように思う。専門家会議は対策本部長(総理)の幕僚であり政策の決定や遂行に関しては口を閉ざすべき存在であったが、見解を発表したり政策の適否を表明する等、恰も政策決定機関や政策遂行の指揮系統の一部と誤認される言動が見受けられために、中国コロナ対処は専門家会議と総理の双頭制となって経済政策との整合性を欠くことに繋がったように思う。参謀が直接隷下部隊の戦闘を指揮することは、日露戦争の旅順要塞攻撃において満州軍総参謀長の児玉源太郎大将が隷下の乃木希典大将指揮の第三軍を作戦指導という名目で直接指揮したことに代表される。児玉大将の作戦指導については、乃木大将の更迭を避けるという満州軍司令官大山巌大将の指示に基づいて行われて成功した事例であるが、大東亜戦争で大本営参謀の辻正信中佐が現地作戦指導と称して行ったポートモレスビー作戦やガダルカナル島奪回作戦はことごとく失敗している。本ブログでも度々書いたことであるが、幕僚は定量的な分析によって序列化した複数の案を指揮官に提出することに尽き、どの案を採用するかは指揮官の専権判断で最終責任も指揮官が負うものである。幕僚は作戦立案に当たっては第一線から距離を置いた冷めた目で全体を俯瞰的に捉える黒子に徹するべきであり、過度に1側面にのみ拘れば精緻な作戦計画は立案できないように思う。以上のことから、改組された分科会には経済担当を含めて多方面の有識者が名を連ねるとされているので、感染者の抑制・経済活動・出入国管理等にバランスの取れた提言が期待できるのではないだろうか。

 今回の分科会とよく似た存在として軍隊(自衛隊)の司令部組織がある。司令部は作戦・情報・後方・通信等の分野に区分され、参謀長が各分野の整合を図り注力の方向を纏めて指揮を補佐することとなっているが、軽易な専権事項を除いて直接に部隊に命令する権限は有しない。そのために、極論であるが参謀は人格を持ってはならないと主張する人も居る。今回の分科会が行政組織系統樹上のどの位置に置かれるか判らないが、以後の中国コロナ対処で有効な存在であって欲しいと願うと同時に、指揮系統(ライン)と参謀(スタッフ)の在り方と権限について、国民も認識する必要があるのではないだろうか。