北朝鮮が、南北首脳合意のシンボルであった開城の南北共同連絡事務所を爆破した。
同時に、半島東部の金剛山と西部の開城付近への軍展開、南北軍事合意で撤去された監視所の復活や非武装地帯での軍事訓練も実施するとされている。直接の動機は韓国の脱北者団体が飛ばした「金正恩氏弾劾ビラ」を韓国が制止(抑止)しないことへの懲罰と、文大統領の特使派遣打診への回答とした上で更なる軍事行動をも示唆している。困惑した韓国は、大慌てで反北ビラの禁止や脱北団体の行動を規制する立法を表明したが手遅れであった。南北関係の悪化の責任を取って韓国の南北統一相が辞任し、大統領府もこれまでに例を見ない口調で北を非難したが、金大中氏以来の太陽政策は破綻したと観るべき事態かと思われる。北朝鮮ならずとも、首脳会談で合意した鉄道連結事業や金剛山観光事業は進展せず、経済制裁解除についても具体的な努力をしない文大統領に三下り半を突き付けたくなるだろうし、南北軍事合意を一方的に破棄することについても、日韓合意を平然と破った韓国であれば北の横暴を公に非難できないという読みもあったのかも知れない。一連の動きについて文大統領には、二枚舌外交の結末を北朝鮮からの強烈なブーメラン攻撃という形で示されたと受け取って欲しいと願うところである。しかしながら、報道で見る限り韓国の政権内や与党議員には北朝鮮擁護の気配が濃厚であることから、韓国では北朝鮮と袂を分かつことを表明することは政治生命を失うことに繋がるのかも知れない。中国は武漢コロナ疑惑払拭とG7拡大による中国封じ込めに対するキャンペーンとして、インドとはカシミール紛争を再燃させ、オーストラリアとは貿易摩擦を作為しているが、韓国に対しても北朝鮮を使嗾してメッセージを送り緊張を煽ったと観るのは穿ち過ぎであろうか。
気になることは、これらの動きと軌を一にするかのように、イージス・アショアの配備が白紙撤回されたことである。防衛相会見後の報道を見る限り、与党の国防部会等には寝耳に水の内容で、代替案も示されていないようである。防衛相である河野太郎氏の系譜は中途半端な日ソ共同声明を纏めた祖父一郎氏、今に禍根を残す河野談話の父洋平氏であり、親ロ・中・韓の心情・信条を受け継いでいることは明白である。軍隊には「バカな指揮官、敵より怖い」と言い慣わされており、外務大臣失格の前歴を考えれば防衛大臣とするのは疑問とする以上に危険と呼ぶべきではないだろうか。