文科相が6月30日に北大総長をパワハラ疑惑で解任したことが報じられた。
北大総長の解任劇は知らなかったので、経緯を調べてみた。ネット上の記事を時系列に整理すると、2018年10月に職員が総長のパワハラ疑惑を告発。同11月に学長選考会議が調査委員会を設置して30件の非違行為を認定・総長は休職、2019年7月に学長選考会議が総長の解任を文科相に申し立て、2020年1月に文科相は年度内に結論を目指す意向を表明、3月に文科省が行った本人聴聞で総長は不適切行為を完全否認するものの文科相は28件を認定、という経緯を辿って解任決定に至ったものであった。解任を発表した萩生田文科相も「北大の選考会議から厳しい声が一部ではなくて全体的に上がってきた。現場として問題があったんだろうという判断をせざるを得ない結論に達した」となにやら真偽不明であるが「臭い物には蓋」の気配なしとしない歯切れの悪さである。調査委員会の会見でも総長・職員双方のプライバシーを盾に具体的な行為は明らかとされていないが、猛進型指揮官のトップダウン対叱られた経験が無い又は乏しい世代の軋轢という昨今よく目にする構図であろうと推測している。本日の主題は、艦艇内での叱責である。当然のことながら、艦艇でも上司から叱責されることは日常茶飯事である。艦艇勤務は種々の危険性と隣り合わせであり現場指揮官のミスは人命にすら直結する恐れがあるため、事の次第によっては将に「ボロクソ」の叱責を受けることがあるが、世間一般とは異なり叱責された後・極端な例では叱責直後に士官室で食事を共にしなければならないことであり、その際の態度が極めて重要になる。狭い艦内では叱責の事実は隅々まで知れ渡っているので、食事の際に落ち込んでいたり卑屈に振舞えば「暗い男・弱い男」と評判され、不貞腐れていたり殊更に明るく振舞えば「矯正不能の馬鹿」との評価が定着してしまう。こうなれば、直近の指揮官の人物評価に敏感な部下は一様に「信頼できない指揮官」として背を向けてしまい、以後の統率も危ういことになってしまう。このような状態を経験して下級幹部は上手な叱られ方を学び、その経験を経て多くの上級幹部は上手な叱り方を体得している。と綺麗ごとに書いたが、叱られた後に叱った人と囲む食卓の居心地の悪さは格別であり、状況によっては叱られた原因が食卓の話題となることもある。そうなった場合には、俎上の鯉となり、弁明に奔らず、弱音を吐かず、非を認めつつもオブラートに包んだ一端の反骨を示すというテクニックが必要となるように思う。
海軍では艦長は「無理偏に拳骨」と書くと云い、機関長は「云う事キカン長」と云い慣らされて来たのは、この辺の機微を含んでいると解釈している。「云う事キカン長」は指揮官の大方針には全力で当たるが所管に対しては一家言を持ってブレーキを踏む必要性を説いたもので、パワハラを訴える地位に置かれた人々には胸裏に刻んで欲しいと思うものである。