もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

在韓米軍削減の幕僚案に思う

2020年07月19日 | 韓国

 米国防総省が政府の求めに応じて在韓米軍の削減を含む複数の選択肢を大統領に提出したことが報じられた。

 在韓米軍駐留経費の増額協議が頓挫していることにいら立ったトランプ大統領が、国防総省に検討を命じた結果であろうと思うが、ドイツ駐留のNATO軍削減(3万5千人→2万5千人)を発表した矢先の出来事であり、在韓米軍の縮小も絵空事ではないように感じられる。在韓米軍の規模(括弧内は在日米軍)は、陸軍20,000(2500)人、海軍300(6800)人、空軍8,000(12500)人、海兵隊100(15000)人、特殊作戦軍100(0)人、合計約28,500(37000)人とされている。一方、韓国の2019年駐留経費の負担は99億円(日本は1978億円)となっている。また、米軍の駐留経費に対する各国の負担割合は、韓国40%(日本74.5%、ドイツ40%)とする記事もあることから、韓国に対するアメリカの駐留経費増額要求は駐留経費を超える額となり、この数字が正しいのならば、アメリカは善意の警察官ではなく傭兵輸出で外貨を稼いだ中世の都市国家にも似てくることとなる。在韓米軍の縮小・削減が実現して最も喜ぶのは北朝鮮であり中国であろうが、文大統領を中核とする韓国左系市民も「策成れり」と密かに思っているのかも知れない。アメリカは、中国牽制の意味から台湾擁護を鮮明にし、台湾海峡や南シナ海で自由の航行作戦を実施し、先日も南シナ海で2個の空母打撃群による共同訓練を実施しているが、グアムの戦略空軍(B52)を本国に移転させる等、戦略に一貫性を欠いているように感じられる。駐韓米軍の削減案に対しては「同盟重視」の立場をとる超党派議員・有識者から疑問の声が上がっていると報じられているが、大統領再選以外には興味を示さないトランプ大統領であれば、在韓米軍の削減も案外に早いのかも知れない。在韓米軍削減の動きについて中国や北朝鮮の反応は伝えられていないが、米朝会談の再開を頑なに拒んでいる北朝鮮を軟化させて交渉のテーブルに引き戻すことや、米中貿易戦争における中国の譲歩には結びつかないものであろうと考える。

 古人は「安物買いの銭失い」と安直な銭惜しみを戒めている。日本だけの諺かと試しに検索したら、英国の“Penny wise and pound foolish(ペニー(小銭)に賢くポンド(大金)に愚か)“がヒットしたが、トランプ大統領の故事・古語辞典には載っていないようである。在韓米軍の削減という恐喝は本年度で期限を迎える在日米分負担(思いやり経費)協議でも再現するだろう。その際は「年間2000億円を遥かに安い核開発に回す」と啖呵を切るのも有効ではないだろうか。日本の核拡散防止条約からの脱退と核開発(現有の原発燃料を利用すれば最短で3か月で可能とする見方もある)は、米・中・北・韓に戦略の転換を余儀なくさせるもので、極めて有効な切り札となるのではないだろうか。これには世界各国からの中国コロナ損失など足元にも及ばない経済制裁が科せらるだろうが、かって中国も「ズボンをはけなくても核兵器を」とした時期もあることを思えば・・・。ここまでやると、日本が「安物買いの銭失い」の隘路に迷い込むことになるなァ。