日本人の月面着陸が現実味を帯びてきた。
アメリカの月探査計画に日本も参加する一環として、日本人宇宙飛行士にも月面に降り立つ機会が与えられるという内容の合意が日米間で交わされたもので、順調に推移すれば2020年代後半にも実現する見通しとされている。日本が国際宇宙ステーションへの物資輸送から撤退したこともあって宇宙への夢がしぼむかに見えたが、何とか命脈を保ち得た感がある。アメリカが進める「アルテミス計画」はアメリカ人宇宙飛行士を再び月面に送り、さらには火星への有人着陸も視野に入れる壮大な計画で、新型ロケットと宇宙船を開発して、2024年にアメリカ人宇宙飛行士を再び月面に降り立たせ、2026年までに月を周回するゲートウェイと呼ばれる新たな宇宙ステーションを完成させて4人の飛行士が滞在できるよう整備、2028年にはゲートウェイを拠点にして本格的・継続的な月面探査を開始するものである。また、火星への有人飛行・着陸は月面基地を拠点として2030年代に実現することを目標としている。有人月面探査に関しては既に中国が自前の宇宙ステーションを完成させていることもあって、米中の先陣争いの様相を呈している。アルテミス計画において日本が担うのは居住棟の建設・月面探査車の開発・ゲートウェイへの無人物資補給が主なものとされているが、国際宇宙ステーション(ISS)における実験棟の建設や「こうのとり」の補給で示した実績が評価されたものであろう。しかしながら、ゲートウェイの支援に対しては補給機を大型化する必要があるとともに「こうのとり」ではできなかった燃料補給や月面探査で得た資料等を地球に持ち帰ることも要求されるであろうことを考えれば、現有のH3ロケット以上のペイロードを持つロケットや月の引力から離脱するための推進力(エンジン)を持った補給機の開発が必要となり、なかなかに前途多難と思える。さらに「アルテミス計画」は多額の経費が掛かるために日欧が協力するものであるが、今後の財政負担や円滑な協調体制構築等、予断を許さない側面をも有しているようにも思える。
月面の有人探査によって何が得られるのだろうかと興味が尽きない。月は小惑星衝突によって地球からもぎ取られてできたとされるが起源が明らかとなるのだろうか?、推測されるている氷はあるのか?、地球と同程度と推測されている地下資源はどうなのか?、実利となるものは少ないとは思うが、月面探査は人類にとってはそれ以上の恵みをもたらしてくれるものと期待している。残念ながら、日本人が月面に降り立つことは見届けられそうにないが、せめてゲートウェイ運用開始は見たいものである。